第206話 カソウ大将軍

「お主らは何者だ、そこで何をしている」

偉そうな男は俺達に話し掛けて来た。


王城前まで襲撃してきて、4人で何やら話し込んでしまったからね。何やってんのって思ってるだろうが。攻撃してくると思ってたんだけどね、ここにきて話ししてどうするんだろう? 時間稼ぎか? まあ、ちょっと付き合ってやろうか。


「他人の名前を聞くなら、自分の名前を先に言うのが礼儀じゃ無いのか?」


「ぬ、儂の名を知らんのか?」


「知らんね。誰か知ってる?」


俺の後ろにいるジャイアントハーフの聖騎士リンと、ブラックジャガー獣人のノワ、剣聖ルイに尋ねた。


リンとノワは首を振るがルイが答えた。

「大将軍で王弟のカソウ公爵です」


「大将軍?」


「軍務の最高責任者です」


「軍務の最高責任者ねぇ」


俺はカソウ大将軍を見た。


「俺はEランク冒険者のタクミだ。で、カソウ大将軍が何の用だ」


「Eランク冒険者? その実力でか?」


「そうだ、冒険者ギルドにはEランクにさせている。まあ、そんな事はどうでも良いんだよ。で、何の用だって聞いているんだが?」


「お主らは何故王城に乗り込んで来た」


「ノワ、ザニイをカソウ大将軍に渡しな」


「はーい」


ノワは、闇の触手で吊り下げているザニイ将軍を、カソウ大将軍に放り投げた。


ドサッ。


「ぐへっ、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません……」


顔が倍に腫れ上がり、泣きながら謝り続けるザニイ将軍の、変わり果てた姿にカソウ大将軍がたじろぐ。


「まさか? ザニイ将軍なのか?」


「こいつがな。俺達に喧嘩を売って来た。なのでそれを受けた。それで、俺達4人はマサイタ王国と戦争中の認識だからなぁ。本丸を落としに来た」


「待て待て! お主ら4人が国と戦争って、正気か?」


「正気だし、勝つ気でいるよ。このまま、王城を落として、国王を殺せば勝ちだろう。その後でどうなろうと知った事じゃない」


「しかし、このまま戦えばお互いただでは済むまい」


「お互い? おかしな事を言うなぁ? ただで済まないのは、マサイタ王国だけだ。俺達に傷一つつけられないだろう」


「それほど、自信があるのか?」


壊された城門と殺された2階の弓兵達を見るカソウ大将軍。


「あー、こんな感じだ」


俺は肩に担いでいた聖剣を、無造作に袈裟斬りの軌道で振り下ろした。


「ぬ……」


カソウ大将軍は横に躱す。


流石、大将軍。予備動作無しで振った聖剣を躱すとは、でも狙いはあんたじゃないんだよ。


ズドドドドドド……。


王城の角が斜めに斬れて、崩れ落ちた。


「は、はぁあああああああ? お主がやったのか!」


崩れ落ちた王城の一角を見て、カソウ大将軍は驚く。


「ところで、あんたの国は、戦争で敵の本陣に攻め込んだ時に、敵に待ってくれと言われたら待つのか? 随分悠長だなぁ。理由も分かっただろうし、続きをしようか」


俺はカソウ大将軍達に威圧を放ち歩き出した。

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