第205話 剣聖ルイについて

王城の2階から矢が雨の様に降り注ぐ。


カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン!カン……


ジャイアントハーフの聖騎士リンが『聖騎士の守りPaladin guard』を発動しているので、俺達には当たらないんだけどね。


俺はアイテムボックスから、聖剣を取り出した。


剣聖ルイが目を見開き聖剣を見詰めて、「ま、まさか……」と呟く。


ん? ルイの奴、何言ってんだ? と思いながら、聖剣を軽く横に薙ぎ払った。


聖剣から放たれた聖なる刃は、弓兵を薙ぎ払い、上下に切断するとその後ろの城壁も斬り払った。


「あぁ、やっぱり殺してしまったのですね……」


と嘆くルイ。


「そりゃそうだろ、弓矢で攻撃されてんだよ。敵は俺達を殺す気でいるんだから、殺されてもしょうが無いだろう。既に開戦してるのさ」


「し、しかし、モンスターでは無く、生身の人間で、家族もいます。彼等は自分の意思では無く上司の命令で攻撃してると思います。殺さず制する事が出来るのであれば、その方が……」


「ルイ、タクミ様のお考えに口を挟むのは止めなさい」

リンがルイを窘めた。


「ルイって要らないんじゃなーい? 何だか文句が多いよねー。ポイって捨てちゃうかー」


ブラックジャガー獣人のノワがそう言うと、ルイは焦り出した。


「え? ……そんな」


「まあまあ、2人とも落ち着けよ」


「畏まりました」

「分かったー」


「そう、それだよ」


「「へ?」」


「ノワとリンはおれの行動に何も言わず100%従う。それは凄く良い事で助かってるのだが、俺も間違う事はある。イエスマンだけじゃ無くて、違った考えの奴もパーティーに入れておきたいんだ。それがリーダーの度量ってヤツだ」


「いえ、タクミ様は間違う事はありません」


「お! リン、珍しく俺の考えに反論したな、うんうん、どうしてだ?」


「あ! すいません。そんなつもりで言った訳では無いのです。反論と言うか……、タクミ様は神様より、『好きな事をやって良いよ』って言われたと聞いています。つまりタクミ様の行動は神様の意思。例えタクミ様の行動が、後でタクミ様が間違ったと思っても、それも神様の意思なので、間違いでは無いのです」


「ふむ、リンらしいと言えばリンらしい解釈だな。でもそう言う話なら、ルイをパーティーに入れてるのは、俺が決めた事だ。これも神の意思だと出来るんじゃないかな?」


「あ! そうですね。すいません出過ぎた事を言いました」


「いや、良いんだよ。偶には意見を言ってくれ、俺と異なる考えも聞きたいんだ。但しそれで俺がどう行動するかは俺が決める。ルイも俺に意見や考えは述べるが、最終的に俺が決めた事には従うんだろう?」


「も、勿論です!」


「だったら、良いよ。ノワとリンも2度とルイを捨てようなんて言わないでくれ」


「ん~、分かったー」

「畏まりました」


まあ、出来ない子も可愛い部分もあるから、ルイにツッコむのも、楽しいんだけどね。本気で怒ってる訳じゃないし。


なんて敵前で、のんびり会話をしていると、城から騎士達と軍の責任者らしい奴が現れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る