第204話 ザニイ将軍2
「ぐふぅ!」
大剣で斬りつけたはずが、いつの間にか俺に馬乗りになられて、今まで経験した事の無いであろう、魔王の手甲による100倍に痛みがザニイ将軍を襲う。
「ぐあああああああああ!!」
ドガッ!
構わず俺はザニイを殴る。
「な、何だぁ! な、何があったぁ」
ドガッ!
俺は無言で殴る。
「ぐはっ」
ザニイは両手で顔を庇うが、構わず俺は強めに殴る。
バキッ!
「あああああああ」
腕が折れる音。両手の指が複雑に折れ曲がってる上に腕も折られて、手で顔を庇えなくなったザニイ。
ザニイと一緒に来ていた騎士達は、信じられない表情で唖然として、その様子を眺めるだけだ。
ドガッ!ドガッ!ドガッ!ドガッ!
俺はザニイの顔面をひたすら殴る。
「ひぃいいいいい」
歴戦の猛者ザニイ将軍は拷問ぐらいで、音をあげる男では無いのだろうが、何せ魔王の手甲は痛さ100倍だ。人間には耐えられないだろうね。
涙と鼻水と涎と青アザ、倍に腫れ上がった顔面、叩き潰され切れた皮膚が、原形を留めていない。
殴るのを止めてザニイの顔を睨む。
「井の中の蛙が、大海を知ったか?」
「ひぃ、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません、すいません……」
情けなく何時までも泣きながら謝り続けるザニイ将軍。
俺は立ち上がりとどめに、ザニイ将軍の両足も蹴り折った。
バギッ!ボキッ!
「ぐあ゛ぁぁぁ! ……すいません、すいません、すいません、すいません……」
「ノワ、マイルはその辺りに放置して、ザニイ将軍を吊り下げて俺についてこい」
「分かったー」
ブラックジャガー獣人のノワは、闇の触手で吊り下げていた衛兵隊長マイルを放り投げ、闇の触手でザニイ将軍の片足を拘束し、吊り下げた。
「しょ、将軍がぁああああ」
「ひ、ひぃ」
「逃げろぉ」
ザニイ将軍が闇の触手に片足を掴まれて、吊り下げられたのを見て、騎士達が蜘蛛の子を散らす様に慌てて逃げ出した。
「コイツらこれで騎士なんて勤まるのか?」
「絶大な信頼を置いていた歴戦の猛将ザニイ将軍が、一瞬のうちに叩きのめされて、心をへし折られて、子供の様に泣きながら謝り続ける姿を見たのですよ。仕方がないと思います。私もザニイ将軍のこんな姿を見る事になるとは、ショックと恐怖で震えが止まりません」
剣聖ルイは冷や汗を掻き、青い顔で両腕で自分の肩を抱いて震えていた。
「ふーん、さあ、王城に乗り込むぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください。ザニイ将軍に呼ばれたのですよね。これで終わりじゃないのですか?」
剣聖ルイは俺を見詰める。
「終わりの訳無いだろう。俺はこの国に喧嘩を売られた認識だぞ。国王をぶっ飛ばすぐらいしないとな」
「て、抵抗されたら、ど、どうなりますか?」
ルイが俺に尋ねる。
俺が負けるとは1ピコメートルも思って無いんだろうね。
ルイの祖国だからなぁ、心配する気持ちは分かるが、ここで中途半端に終わらせると、後々面倒になるんだよなぁ。やる時はとことんやった方が良いだろう。
「そんな事、今は分からんよ。国王以下周りにいる奴らをぶち殺す。……かもね」
「は、……本当ですか、……マサイタ王国は本日で終わるかも知れない?」
「国王次第だな」
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