第203話 ザニイ将軍
俺達は壊した城門を越えて、城の敷地に足を踏み入れた。
そして、暫く待つと、城の中から騎士達が駆けて来た。
中央に髭面の大男が大剣を担いで来た。頬に刀傷がある歴戦の強者っぽい雰囲気の目付きが鋭い迫力の男。
「おう、てめえがタクミかぁ!」
「そうだが、あんたがザニイ将軍か?」
「おう、俺がザニイだ。てめえ、城門を壊しやがって、おイタが過ぎるぞ。うちのマイルを今直ぐ解放しな。」
ザニイ将軍の後ろで騎士達が俺達を眺めている。将軍に絶大な信頼をおいているんだろう。衛兵隊長を吊り下げて、門をぶち壊す俺達を全く恐れていない様だ。
「タクミ様、ザニイ将軍は歴戦の猛将です。戦場で殺した敵は数知れず、冒険者ランクだとSランクに匹敵する実力ですので、どうか穏便に……」
剣聖ルイが小声で囁く。
「しっ、黙りなさい」
ジャイアントハーフの聖騎士リンがルイに注意して睨む。
「は、はい」
ルイは後ろに下がった。
「なに、上から目線で話してんだ? こいつが、俺に喧嘩を売って来たので、買ったんだが、この国の衛兵隊長らしいじゃねえか。この国が俺に喧嘩を売ったと判断したぞ」
「小僧、冒険者ギルド前で相当やらかしたらしいな。面を拝んでやろうと思ったが、礼儀も知らんのか? これは身を持って教えてやらないといけないらしいなぁ」
「はぁ、用事があるなら直接来い! 俺を呼び出すなんて無礼な奴だ」
「小僧、『井の中の蛙大海を知らず』って言葉を知ってるか? 狭い世界で今まで思い通りにやって来たんだろうが、上には上がいるって教えてやろうかぁ!」
ザニイ将軍は威圧を込めて大声を出した。
「それはこっちの台詞だ。今までショボい戦場で、小さな勝利をコツコツ積み上げて来たらしいが、俺が本当の戦いを教えてやる。グダグダ言ってないで掛かって来い! てめえは口だけか? その大剣は飾りかぁ?」
俺は平然と返す。
「おい、実力を見て騎士に取り立ててやろうと思ったが、殺すしか無いようだなぁ」
ザニイ将軍は大剣を構えた。
「死ねぇ!」
ザニイ将軍の殺気が強まる。
俺は素手で構える。勿論手には痛さ100倍の魔王の手甲で、足には魔王のブーツを履いている。
そして、俺は時を止めた。
ザニイ将軍はいつの間にか俺の目の前で大剣を振り下ろしていた。縮地系のスキルかな?
しかし大剣はまだ、俺に到達していないが、リンが『
流石リンだ。
俺は魔王の手甲を装備した右手でザニイ将軍の腹をぶん殴る。そして左手でこめかみにフックを入れた。
倒れるザニイ将軍。
念には念を入れて。大剣を持った両手を何度も何度も踏み潰す。両手の指があり得ない方向に曲がって、大剣を握れなくなった。
さて、心をへし折ってやろうか。
ザニイ将軍に馬乗りになって、顔を数発死なない程度に殴ってから時を動かした。
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