第161話 撤退

ゴブリン達の猛攻が激しさを増す中、剣聖ルイは撤退する為に後方の道を作る。


元々撤退を許容した戦略であったのか、後方から迫る人数は思いの外少ない様だ。


ルイは剣の腹でゴブリン達を叩き飛ばしながら逃げ道を作る。


「みんなぁ!こっちだぁあああああ!」

叫びながら来た道を突き進む。


ルイとギルド長の周辺にいた冒険者からルイに続いて逃げ出す。


「みんなぁ!ルイさんに続けええええ!」


ギルド長は声の限り叫びながら、ルイの後を追うように冒険者を誘導し、迫り来るゴブリン達を倒す。


冒険者達の殆どはルイの活躍と、ギルド長の殿の頑張りにより、命辛々逃げ出す事が出来た。


しかし100人の冒険者は10人死亡し、生き残った90人も重軽傷を負っていた。


そして200人の騎士団は、100人が戦死、残り100人も重傷の者が多かった。


完全なる負け戦。

完膚なまでに叩き潰された。


「我々の勝利だぁ!」

ゴブオの勝利宣言に勝鬨をあげるゴブリン達。


ゴブマルが俺のところに報告に来た。


「タクミ様、我々の勝利で御座います。」


「う、うん。そうだね。良くやった。おめでとう」


「これより、600の仲間を連れて、サトウ国に凱旋致します」


「600人って、そんな大人数をサトウ国で受け入れ出来るのかね?」


「はっはっは、何を仰いますか、今サトウ国は周辺国と戦時中です。兵隊は何人でも欲しいのですよ」


「ふむぅ、みんなも良くサトウ国に行く気になったなぁ。長年住んでた場所を捨ててサトウ国に行くのだろう」


「我々から誘う前に、サトウ国から来た事を話したら、寧ろみんなから切望されました」


「そんなに?」


「過去から何世代にも渡って、人族が開拓と称してゴブリンやコボルト、オーク達亜人の住み家を徐々に侵攻し、追いやられていたのです」


「そうなんだぁ」


「安住の地を求めていたのでしょう。しかもサトウ国は、獣人や亜人が先頭に立って、人族の領地を逆に侵攻しているのです。自分達もその祭りに参加したかったのでしょう」


「成る程ねぇ。ところでここからサトウ国に行く時、マヒロシ王国を通過するけど、600人の亜人って大丈夫?」


「はい。既にレン国王とマヒロシ国王との間で事前に話が着いています」


「え? 通過OKと言う事か。ここからだと、ラナの領地も通るよね。そこも問題無し? そもそも野良の亜人と区別がつくのかね?」


「はい。全く問題ありません。通過の際は、この旗を掲げます」


ゴブマルはサトウ国の旗というモノを見せてくれた。


「そ、そうか、道中気を付けて」

サトウ国の旗を初めて見たよ。


「はっ、有難いお言葉」


そう言って、ゴブマル達は整然と隊列を組んで、マヒロシ王国に向かった。

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