第153話 証言?

ブラックジャガー獣人のノワが、Bランク冒険者パーティー『英雄に至る者達』に、難癖を付けられてる様なので、俺とジャイアントハーフの聖騎士リンと、剣聖ルイは急いでノワの元に駆け付けた。


後ろからDランク冒険者パーティー『森の狩人』の、5人もついて来る。


「おい!何うちのメンバーに、言い掛かりを付けてんだよ」


俺は『英雄に至る者』のリーダーのミムラカに強い口調で言う。


「あ゛!お前誰だぁ!」


「俺はEランク冒険者のタクミだ」


「Eランクぅ?ゴミがぁ!口出しすんなぁ!殴られたく無かったら、素材を置いてサッサと帰りな」


「ゴミ? 狼1匹も倒せない癖に随分大口を叩くな?」


「はぁ? もう少しで倒すところだったのに、横から出て来て弱った獲物を横取りしやがって。俺達とEランクのゴミとどっちが正しいか、誰の目から見ても明らかだ」


「ミムラカさん、この人達は9匹のフォレストウルフと、月狼ハティから俺達を救ってくれんたんです」


『森の狩人』のリーダーであるキオーツが、俺とミムラカの会話に割り込んで来た。


「あ゛? 『森の狩人』のキオーツじゃねぇか。てめえらが狼如きに遅れを取るから、Eランクのゴミに舐められるんだよ。こんな奴らが居なくても、俺達が退治してやったさ」


「しかし、あの数のモンスターには、普通歯が立たないと・・・」


「うるせええええ! お前等も証言しろよ、此奴らが獲物を横取りしやがったてな! じゃないと、後でどうなるか分かってんだろうな? 流れ者の冒険者につくか、地元の先輩を立てるか、良く考えれるんだな」


「証言?」

此奴ら何を言ってんだ? 誰に証言するんだ?


「タクミさん、すいません。後で必ずお支払いしますので、この素材を『英雄に至る者達』の方々に譲っていただけませんか?」


小声で俺に懇願するキオーツ。

『森の狩人』の他のメンバーも両手を合わせて、申し訳無さそうに俺に頭を下げる。


意味が分からん。何で俺達がこんなカスに素材を譲ら無いとダメなんだ。

何か俺の知らない事があるのか?


「証言ってなんだ?」

俺はキオーツに尋ねる。


「え? ギルドに戻って、討伐の証明と報告をしますよね? その時どう言う経緯で倒したか、説明するじゃ無いですか? その時揉めてたら第三者の証言が重要ですよねぇ・・・」


「はぁ? これだけ暴言吐かれたら、此奴らを生きてここから帰す気ねえよ。ギルドになんか戻れねえぞ! なぁ、ノワ」


「ですですー」

ノワは解体を終えており、感情が抜けてのんびりした口調とは裏腹に、ゆらりと立ち上がり、ゾワリと背筋が凍る様な闇の魔力を溢れさせた。


そのギャップが恐怖を増幅させた様だ。


「ひぃ・・・」

涙目で顔が真っ青になり後退る、『英雄に至る者達』のモカ、カナガオ、タシバ。


「ど、どう言う事だ? 俺達を殺すつもりか? 殺人罪で死刑になるぞ」

そして、急にオドオドし始めたミムラカ。


ああ、此奴ら俺達が手出ししないと思って、大口叩いてたのね。


納得。


俺ってそんな甘ちゃんじゃ、ないんだよねぇ。


俺は邪悪な笑みを浮かべて、ミムラカに近付いていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る