第152話 英雄に至る者達

3人の冒険者がフォレストウルフと戦っていた。


背の高い男が盾を持って、フォレストウルフの攻撃を何とか防ぎ、横から別の男が剣を突き刺そうとするが、フォレストウルフは素速く躱す。


フォレストウルフが躱したところに、後衛の女性の魔法使いが魔法陣を放つ。その魔法もフォレストウルフは躱す。要はフォレストウルフのスピードに翻弄されてる状況だ。


フォレストウルフの攻撃を防ぎきれないケースもあり、盾持ちの男があちこち怪我をしていた。


「くっ、このままじゃ不味いぜ」

「畜生!速すぎて仕留めきれねぇ」


その時、剣の男の脇を擦り抜け、ブラックジャガー獣人のノワが、フォレストウルフに迫った。


「おい、危ねえぞ!無理すんな!」

盾の男がノワに声を掛けるが、ノワは聞いていない。


ノワはフォレストウルフが躱したところに、素速く踏み込む、まるで躱す方向が予め分かっていた様に、的確に予測していた。


そして、ナイフでフォレストウルフの首を斬り裂いていた。


そのまま、ノワは解体に移行する。


なんの表情の変化も無い熟練の職人が、いつもの手順で作業する様に、流れる様な素速く鮮やかな手並み。


「いっちょあがりー」

次にノワは月狼ハティと大剣の男の戦いに目を向けた。


大剣の男も月狼ハティのスピードに翻弄されていた。


月狼ハティの爪を大剣の腹を盾の様に使って防ぐが、その返しの大剣の振りが遅く、攻撃した時には月狼ハティは遠くに飛び退いている。


しかし威力は相当で、月狼ハティが躱した後の地面に穴を開け、木々を斬り倒す。


「ちっ、一発当てりゃ倒せるのに、ちょこまか逃げやがってぇ!」


その月狼ハティが躱した位置の直ぐ後ろに、ノワが移動していた。


ノワは首筋にナイフを突き刺すと、頭を押さえて、そのまま解体を始めた。


「もーらい」

フンフンと鼻歌を歌いながら、ノワは月狼ハティの解体を進めていく。


「おいおい、俺の獲物を勝手に取りやがって、どこのどいつだぁ!」


「ん?」

ノワは不思議そうに男を見る。


「俺はBランク冒険者パーティー『英雄に至る者達』のリーダーのミムラカだぁ! 討伐の邪魔しやがって、てめぇ、ただじゃおかねぇぞ」


「私はEランク冒険者のノワだよー。」


ミムラカの仲間の3人もノワの前に駆け寄って来た。


「同じく『英雄に至る者達』の紅一点、魔法使いのモカよ。Eランクの癖に生意気よ。その素材は私達によこしなさい!」


「同じく前衛のカナガオだ!当然フィレストウルフの素材も俺達のものだぁ!」


「俺はタシバだ。大人しく置いていくんだな!」


「貴方達こそ、私達が戦っているところに乱入して来たんでしょー。しかも弱いから何時までも倒せないので、待ってられなかったよー」


「なにおぉ!」

「キー!お黙りぃ!」

「ふざけんじゃねえぞぉ!」

「俺達が弱らせたから、倒せたんだろうがぁ!」


『英雄に至る者達』のメンバーが騒ぎだした。

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