第133話 国王フギ・マヒロシ

マヒロシ王国の第二王子キオーガに案内されて、王城を歩く俺達。


兵士や貴族、使用人がいたが、キオーガと一緒に歩いているので、一瞬考える仕草をするケースもあったが、みんな会釈して無言で擦れ違う。


「任務完了で~す。」

ブラックジャガー獣人のノワが、俺の横に現れた。


「お、ご苦労さん。」

ノワは転移系のスキルか魔法を使えるのだろうか? ちょっとビックリした。神出鬼没なんだよねぇ。


「いつの間に・・・。」キオーガが俺の声に振り向き驚き呟く。


暫く歩くと。


「あの突き当たりを右に曲がって真っ直ぐ行くと、国王の執務室だ。」

キオーガが指差す。


「おう、有難う。」


「イカサをここに残すので、用が済んだら俺の部屋に来て欲しい。」


とキオーガが言うので、「分かった。」と答えて歩き出す。


キオーガとお付きの兵士ツホクセは、振り返り歩いて行き、イカサが残る。


国王の執務室前には2名の兵士が立っていた。


近衛兵なのかな? 装備している鎧が他の兵士とは異なり、華美な装飾をしている。


俺達が近付くと誰何される。


「誰だ!なんの用事でここに来た。」


突き当たりだから、執務室に用事が無ければここまで来る人がいないので、当然の台詞だ。


しかも明らかに冒険者風の服装だし、貴族には見えないから、不審者感丸出しだ。


俺は小声でノワとジャイアントハーフの聖騎士リンに指示を出す。

「ノワ、リン、気絶させるから音がしないように、寝かせてくれ。」


「分かりましたー。」

「畏まりました。」


俺は時を止めて、アイテムボックスから雷の杖を出して、扉前の近衛兵2人を気絶させた。その後、雷の杖をアイテムボックスに収納し、時を動かす。


ノワとリンが素早く踏み込み、倒れる近衛兵達を抱えて、音が立たないように寝かせた。


国王の執務室の扉をノックする。


「誰だ!」


中から声が聞こえる。

あ、失敗した。ノックしないで、いきなり扉を開ければ良かった。


無言で扉を開けて、中に入ってから挨拶? した。


「冒険者のタクミだ。この国の第2王女に喧嘩を売られたので来た。」


なんか格好つかない台詞だなぁ。

「宣戦布告しに来た!」の方が良かったんだけどな。個人的に来たので、有らぬ疑いを持たれても困るしなぁ。


ん? 困るのか? サトウ国の宣戦布告でも良かったか、どうせ戦争になりそうだしな。


まあ、いいか。今更変更しても変だしな。


執務室には二人の男がいた。


執務机の豪華な椅子 腰掛けている多分国王と、立っている文官風の老人で多分宰相。


「はぁ?」


分けが分からないって顔でこちらを見る二人。


「儂は国王フギ・マヒロシだ。儂に用事があるのかな?」と国王。


「儂は宰相のヤナゴじゃ、ラナ王女が何かしたようだが、それで訴えたい事でもあるのかな?」と宰相。


あれ?  思ってた反応と違うぞ。

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