第134話 国王フギ・マヒロシ2
マヒロシ王国国王の執務室に踏み込んだ俺達。
てっきり、「無礼者おおおお!ここを何処だと思ってるんだああああ!」とか、「何者だあああ!不審者を捕まえろおおおお!」みたいな感じで、剣を抜いて襲ってくるのを、やっつける予定でいたんだけど、冷静に「何の用事?」って聞かれるとは・・・。
取り敢えず、第二王女ラナとの間であった事を話したが、フギ国王もヤナゴ宰相も黙って口を挟まず聞いていた。
俺の話が終ると、国王が話をしてきた。
「あなたがデーモンスレイヤーであり、ドラゴンスレイヤーである、冒険者タクミ殿で間違いないかな?」
「そうだ。」
「ふむ、娘のラナが迷惑をかけた事を詫びると同時に、娘の命と我が国の村人達を救ってくれた事を感謝するぞ。そして息子のレクが世話になった事も感謝する。」
「・・・。」
無言で国王を見ている俺。
なんて返せば良いんだ?
ラナの件も「詫びる」って言葉だけで、頭を下げもしないし、お詫びの品も無しかぁ。胸を張って「詫びる」って言われてもなぁ。
「勿論、娘ラナが戻って来たらきつく叱るが、その件で何か要求があるのかな?」
ふむ、要求かぁ。
なんだか、俺がクレーマーみたいな言い方じゃないか。
「要求では無いが、一つ聞きたい。悪魔の討伐をマヒロシ王国で行う必要があると思うが、その件についてはどう考えるんだ。」
要求では無いぞ。ただの確認だ。
「その件か。報酬をはずむので、タクミ殿に悪魔討伐をして貰おうか。」
「断る。その件は先程話した通り、何度もラナ王女に依頼されたが断ったと言ったはずだがな。」
「やはり無理か。軍は動かせ無いので、冒険者ギルドに指名依頼を出して、対応する事になるな。または傭兵ギルドの傭兵を雇って対応させるかだな。」
「成る程、サトウ国と戦争する為の戦力は、悪魔討伐には向けられないのだな。」
「うむ、何故タクミ殿が戦争の事を知っているのか分からんが、もう後には引けん。マトクシ公爵領とリトット伯爵領をサトウ国に奪われたのだ、理由の如何を問わず戦争は避けられんのだ。マヒロシ王国の沽券に関わる。」
「理由の如何を問わずか・・・。国王が今この場で殺されるとしても、引く気はないのか?」
俺は殺気を込めて国王を睨んだ。
「む、タクミ殿は何故サトウ国に肩入れするのだ?」
ちょっとビビりながら国王が俺に尋ねる。
はぁ、質問を質問で返すかぁ。
ここまで来て頭を下げる気も無いし、戦争を止める気も無いみたいだなぁ。
「マトクシ公爵領の件について、どんな報告を受けているか知らんが、発端はリトット伯爵が、俺に手を出そうとした事にある。結果的にサトウ国の領土となっただけだ。」
「ぬぬ、タクミ殿がサトウ国と、何らかの関係があるとは薄々感ずいていた。現在サトウ国との交渉の窓口が無いのだ。タクミ殿は、サトウ国からマトクシ公爵領を、マヒロシ王国に返還する交渉をしてくれ。」
何を言ってるんだ、この馬鹿王は?
「何故、俺がそんな事をする必要がある? 俺が殺されそうになったのだよ。俺がマヒロシ王国を滅亡させる事はあっても、マヒロシ王国の為に働く事は無い。ミーズ村近郊の森でも、マヒロシ王国の兵士が襲ってきたしな。むしろ国王とこんな話をしている事が異常だ。」
「タクミ!お主はここに何をしに来た。」
「勿論、俺を襲ったマヒロシ王国を倒しに来たんだよ。まあ、国民全員を殺すまでの恨みは無いので、責任者である王族の殺害だな。」
「そ、それは儂の命令では無いぞ!」
「そんな事は分かっているが、跳ねっ返りを管理出来なかった、統治者の責任だな。貴族や王家の者が他国の者に接する場合、国の顔となるのだろう。仮にその者が他国に宣戦布告すれば、例え国王が知らなくても開戦するのは常識。対個人であっても同じだ。」
「そ、それはそうだが・・・。」
「国王個人に恨みは無いが、覚悟して貰おうか。」
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