第107話 デーモンスレイヤー

王都の門では、騎士隊副隊長ジモが門番達に厳しく説教していた。


なんだか面倒事が収まった様なので、王都の中に入ってもいいかなと、思い始めている。


「リン、ノワ、王都に入ってみようか?」


「承知しました。」


ジャイアントハーフの聖騎士リンは、地竜の馬車の御者席に乗る。


「分かったー。」

ブラックジャガー獣人のノワは、馬車に乗り込む。


「ジモ、俺達は王都に入ってるよ。」


俺はジモに声を掛けて馬車に乗り込もうとする。


「あ 、レク王子から王城にお招きする様に、言われておりますが・・・。」


「面倒な事になりそうだから行かない。」


「はぁ、そうですよね・・・。」


ジモは壊れた門と門番達を見て溜息をつく。


「お泊まりする宿だけでも、教えていただけませんか?」


「来たばっかりなので、宿と言われてもなぁ。」


「それでは、『貴賓の宿』にお泊まりください。滞在費は王家で持つ様に言われていますので。」


「ふ~ん。考えておくよ。」


「はぁ、そうですか・・・。」

また溜息のジモ。


ジモは俺が紹介された宿に行かない事は分かったみたいだね。


「じゃあね。」


ジモに手を振って、俺も馬車に乗り込んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ジモ副隊長、あの人達はいったい何者ですか?」


門番の隊長ががジモに話しかけた。


「タクミ様は悪魔殺しデーモンスレイヤーで、レク王子の王家の試練を手伝って貰った。タクミ様がいなければレク王子の試練は達成出来なかっただろう。」


「デ、デーモンスレイヤー・・・。そんな、デーモンスレイヤーと言えば英雄じゃないですか、王都にて大々的にパレードを行い、国を挙げて称えるべきものです。何故Eランクの冒険者なのですか?」


「そうなのだが、タクミ様には出世や栄光は望まない。Eランクもタクミ様の要望によるものらしい。」


「我々はその様な人と敵対しようとしたのか。」


「その通りだ。タクミ様が本当にお怒りになれば、このマヒロシ王国も滅亡するかも知れないぞ。」


「そんな大袈裟なぁ。」


「いや、大袈裟とは言い切れんぞ。まだ未確認情報だが、タクミ様は竜も倒したらしい。」


「竜! ド、ドラゴンスレイヤー! まさかデーモンスレイヤーでありドラゴンスレイヤーであるとは、物語の英雄そのものじゃないですか!」


「レク王子はタクミ様を尊敬しているし、あの戦力が他国に行く事になれば恐ろしい事から、何とかこの国に滞在していただき、可能であれば居住していただく事が出来ないかと思っているのだ。」


「うっ・・・。」


「そのタクミ様に無礼を働き、敵対関係になりそうだったんだ。お前らの処罰は覚悟しておけ。」


「そんなぁ。」


ジモは壊れた門を見て。

「この門の修理代も門番達の給与から差し引くからな。」


「ええええ!それだけは勘弁してくれよぉ。母ちゃんに怒られる。」


「馬鹿か!それくらいで済んで良かったと思え。俺が来るのが遅れたらお前ら全員殺されてたぞ!それどころか王都も壊滅したかも知れないんだぞ!」


「ふぅ、そ、そうかもしれないなぁ。はぁ。」


溜息をつき、しょげ返る門番隊長の後姿は猫背になり哀愁が漂っていた。

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