第82話 マトクシ公爵

迷宮都市リトットにマトクシ公爵が軍とともにやって来た。


リトット伯爵は門前で迎える。


豪華な貴族用馬車から降りる公爵。

金髪に白髪がまじる背筋が伸びて貫禄のある老人。


「ようこそ、お出で下さいました。お祖父様。」


マトクシ公爵はリトット伯爵の母の父、祖父にあたる。


「リトットおおお!何をやっとる!」


リトット伯爵を見ていきなり怒り出すマトクシ公爵。


「は、はぁ?」

驚き戸惑うリトット伯爵。


「ポーションの職人を追い出してどうするのだああああああ。そしてダンジョンに入れなくなったらしいなぁ!」


「ひぇ、お祖父様、怒って・・る?」


「怒ってるに決まっておろう!リトットの強みは、ポーションとダンジョンだぞ!ポーションを作れず、ダンジョンにも入れないリトットに価値はない!」


「は、はいいい。」


「馬鹿者おおおおお!そんな事で領地運営出来んだろおおおおがあああ!」


「ポ、ポーション職人を取り返す為に兵を貸して下さいいいいい。」


「ふむ。しょうが無い。ダンジョンの調査とポーション職人の奪回の為、兵を連れて来た!!」


「はいぃいいいいいい・・・。」


「今日は行軍して来たので、郊外で野営させる。休養をとってから出撃するぞ!」


「はいいい。」


その後、マトクシ公爵と公爵軍の幹部は、リトット伯爵の居城に入り、食事を取り休む。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


リトットを偵察していたブラックジャガー獣人のノワが、俺のところに報告に来た。


「公爵軍がリトットに到着しましたー。」


「やっと来たか。待ってたぞ。」


「予想通り公爵と軍幹部は、居城に入りましたー。」


「良し、俺達は居城を襲撃する。公爵軍はモンスターと牧場軍が攻撃だ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


深夜のダンジョン前。

ダンジョンを警戒する衛兵達を、闇に紛れて牧場軍の元暗部達が襲った。


元暗部達は、スタンピードに備えた砦の門を解放する。


門から出て来たのは、ダンジョン攻略が滞っていた期間に増えたモンスター達。


ゴブリン、コボルト、オーク達の群れが公爵軍に向かう。


その後方から牧場軍が進む。


深夜の夜襲。


これ程、近場に大軍がいるとは、思わない公爵軍の警備は、都市郊外にいる為安心仕切っており、更に行軍の疲れでおざなりになっていた。


公爵軍は、闇に紛れて襲いかかるモンスター達を慌てて対処しようとしたが、鎧を着る時間が無いまま戦闘に突入した事で、劣勢に追い込まれた。


更にその後ろから襲撃する牧場軍には、全く歯が立たない。


そして、リトット伯爵の居城に連絡を取る為に、決死の覚悟で逃れた兵士達は、牧場軍の元暗部に殺されて、居城には状況が連絡される事は無かった。


しかし、都市郊外の大規模戦闘の騒音は居城にも届く。


「この騒ぎは何だ!な、何があったあああ!」

公爵が従者に尋ねる。


「野営中の軍の方角で何かあった様ですが、何も連絡や報告はありません。」

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