第76話 商業ギルドマスターポンマム
迷宮都市リトットにある領主の居城の一室。
商業ギルドマスターであるポンマムが、リトット伯爵と向かい合う。
リトット伯爵の隣には、小柄な人族のチャマグがいる。
「ほっほっほ、ポンマム、至急の用とは何かな?」
宰相ヨシナがいない事に不審がるポンマム。
「宰相ヨシナ様は、今日はどちらに行かれているのですか?」
はっきり言って、リトット伯爵は話が通じ無いし、都市の事を良く分かっていない。
ヨシナに相談したかったポンマムだ。
「ああ、ヨシナねぇ、辞めたわよ。獣がいなくなって清々しているわ。」
「え!ヨシナ様がお辞めになったのですか?」
慌てるポンマム。
「ほっほっほ、そうよ。このチャマグが臨時の宰相よ。」
「ポンマム、宜しく頼むぞ。」
チャマグは横柄に挨拶する。
げげっ、チャマグはワイロさえ渡せば何とでも出来る小者だ。この問題を解決できる能力は無い。
心の中でゲンナリするポンマムだ。
「よ、宜しくお願い致します。」
表面上は落ち着いた顔で会話を進めるポンマムだが、「こりゃダメだ!」と思い始めている。
「この迷宮都市の存続が危ぶまれる2つの大問題が、発生しております。」
「チャマグ、そんな報告はあったかね。」
「その様な報告は御座いません。」
「そうよねぇ。何かの間違いじゃないかしら?」
「いえ、一つ目は冒険者が突然少なくなりました。獣人や亜人の冒険者が殆ど都市におりません。」
「ほっほっほ、それは良い事だわ。問題とは思えないけど?」
「迷宮素材の入手が減っているのです。また、商人の護衛も人手が足りず、流通が滞っております。」
「ほっほっほ、それでは冒険者ギルドに、人族の冒険者を増やすように指示しておきましょう。」
「有難う御座います。しかし、人数が揃うまでの間、商売が成り立たず、領地に治める税金も少なくなりますので、衛兵や騎士の方に護衛や迷宮探索をお願い出来ないでしょうか?」
「なに!税金が減るのか!それは大問題だ。このチャマグに任せろ。宰相権限で騎士を派遣しよう。冒険者ギルドにも至急集める様に厳命しよう。」
うんうん。チャマグの言葉を頼もしく聞いているリトット伯爵。
「有難う御座います。」
と頭を下げながら、溜息をつくポンマム。
冒険者が直ぐ集まれば、何処の都市も苦労していない、冒険者は自由に都市の出入りが出来る。気に入った都市にしか集まらない。
何処の都市も冒険者優遇措置をして、優秀な冒険者に1人でも多く滞在して貰える様に苦心している。
迷宮都市では先代の伯爵が、獣人や亜人の差別を無くして、都市を運営した事により、やっと軌道に乗って来たのだ。
こりゃ、解決しそうに無いな。騎士だって本来の業務を離れて、探索や護衛をするなんて不満がたまりそうだ。
とポンマムは思っていた。
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