第77話 商業ギルドマスターポンマム2

迷宮都市リトットの一室で、領主のリトット伯爵と臨時の宰相チャマグが商業ギルドマスターのポンマムの陳情を受けていた。


「ほっほっほ、もう一つは何かしら?」


「は、はぁ。ポーションを作成する薬師が居なくなりました。」


「え?ポーションと言えば、この都市の特産じゃない!一大事だわ。」


「伯爵様、その通りです。早急に解決する必要があります。


薬師ギルドのマスターに厳重に抗議して直ぐに対応させましょう。」


「そのぉ、薬師ギルドも既にこの都市にはありません。マスターも居なくなりました。」


「えええええ!いったい、どうしてそんな事態になったのかしら?」


「伯爵様が捕まえた狐獣人の薬師ババが、ポーションを作成する薬師達の師匠なのです。


ババがこの都市を出た時に薬師達がついて行った様です。


薬師ギルドも成り立たなくなるほど人が減ったので、マスターもギルドを解散して、都市を出ました。」


「むむっ。」


リトット伯爵は自分の行為が、問題を発生させた事になったのを知り、眉を顰める。


「伯爵、これは迷宮都市への反逆です。騎士を派遣して、薬師達を捕縛しましょう。


罰として捕まえた薬師達を奴隷にして、ただ働きさせるのです。」


「おお!それは良い考え出すわ。チャマグ、早速騎士を派遣しなさい。」


「畏まりました。」


その会話に目を点にしたポンマム。


飛躍し過ぎだろう。

住民が都市を出るのは自由だ。

都市を出て欲しく無ければ、それ相当の便宜を図るのが通常だ。


仮に上手く捕まえて奴隷に出来ても、それを聞いたら、他の住民は怖くて都市から逃げ出すだろう。


溜息を吐くポンマムは、身の振り方を考える必要がある事を認識した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


商業ギルドに戻ったマスターポンマムは、疲れきった様子で執務室の席に座った。


そこにサブマスターのポンコンが入って来た。


「マスター、ヨシナ様の対応は如何でしたか?」


「ヨシナ様は辞めたらしい、後釜は守銭奴のチャマグだ。」


「えええええ!」

驚くポンコン。


ポンマムはポンコンに、リトット伯爵との遣り取りを説明した。


「む、無茶苦茶ですね。」


「そうなんだよ。ポンコン、マスターにならないか?」


「何を言ってるのですか、こんな状況でマスターになるなんてあり得ません。マスター!逃げる気ですね。」


「それも考えた方が良いな。次は俺達かも知れないし、冒険者が少なくなった事で、迷宮のモンスターを間引けない事から、スタンピードのリスクが高まった。もしスタンピードが発生すれば、現状の戦力では対応出来まい。」


「確かに・・・。」


「こりゃ商人ギルド加入の商人達にも情報共有した方が良いな。迷宮素材も手に入らず、ポーションも売れないとなれば、商売は成り立たない。」


「損切りは早い方が良いですね。」


「その通りだ。今なら貯えた資産を持って他の都市で遣り直せる。」

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