第75話 作戦開始

迷宮都市から獣人と亜人が減り始めた。


初めは冒険者達だ。


ブラックジャガー獣人のノワが、以前助けた事のあるジャッカル獣人のジャキに依頼していた。


出来るだけ多くの亜人と獣人の冒険者達に声を掛けて貰い、隣国の牧場に行って貰う事にした。


牧場は獣人と亜人の差別が無い国造りをしている。


ジャキは俺達に助けて貰った事もあるが、元々この都市の領主が嫌いだった事から積極的に声を掛けて、都市を出る冒険者が増える。


獣人と亜人の差別が無いと聞いて、この都市に来たが、明らかに領主をはじめとする貴族達は、亜人と獣人に対する態度が最悪だ。


また、狐獣人の薬師ババがこの都市を去った。実はババはこの都市にいる多くの薬師の師匠だ。


この都市の薬師達は、ババの教えを受けて腕が良い者が多く、質の良いポーションが多く作られる事から、都市防衛が成り立つ為の一つの要因であり、また都市の特産として収益を上げていた。


その薬師達がババの号令で一斉に姿を消した。


もっともババが指示しなくても、獣人が多い薬師達は、先日、門前でババを捕まえた領主の態度を見て、憤慨していたので、ババが声を掛ける前から都市を出る気だったらしい。


更にヨシナも宰相の座を退く、その際、領主に仕える獣人や亜人に声を掛けて、一緒に都市を出る。


今まで人間の貴族や上司に反感を持っていたのだが、ヨシナが彼らを庇ってくれた為、なんとか仕えていた事から、ヨシナが辞めると聞いて、一斉に辞める。


「リトット伯爵様、これを持ちまして、宰相の座を辞しますのじゃ。今まで有難う御座いました。」


「ほっほっほ、臭い獣人と会う必要が無くなり清々するよ。サッサと出て行くのね。」


ヨシナは振り返らず領主の居城を後にする。


「ほっほっほ、さあ、公爵様に連絡しなければ、宰相のポストが空いたので、公爵領から人材を送って貰おう。」


「いっひっひ、上手くいきましたねぇ。これで獣達から人族に仕事を任せられます。」


リトット伯爵の隣には小柄な人族の男チャマグが、手を擦りながら媚びていた。


しかし、冒険者達が減ったと言うことは、迷宮素材の取れ高が減り、流通にも支障をきたす。


迷宮都市の商業ギルドでは大騒ぎになっていた。


「注文を受けている素材が集まりません。」


「護衛の冒険者が見つからないので、商品の配送が出来ません。都市に来る商人も減っています。」


「薬師が居なくなりました。ポーションが仕入れ出来ません。」


「ギルドマスター!これでは商売になりません。」


「うむ、分かっておる。リトット伯爵に要望してくるよ。」


商業ギルドのマスターはリトット伯爵と面会した。

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