7. 家
滞りなく降り続ける雨の滴が、道路沿いに並び建っている店の屋根から、滝のように流れ落ちている。
雨音の中に雑踏を紛れ込ませている光司とジャッキーは、周囲に怪しい姿が無いかを注視しながら明かりが少ない路地を走っていた。
光司は持ち慣れていない大きな銃を抱えながら走っていたからか、かなり息を切らしていた。
しばらくしてから十字路に出ると、二人は壁際に背中をつけて、息を整えた。光司の足は靴下が気持ち悪いくらいにびしょ濡れだった。
「光司、それどこで手に入れたの?」
「これ?おっさんから貰ったんだ。軍人みたいな格好してたけど」
「......軍人が市民に銃をあげるってどういうことよ」
「え?」
「何でもないわ、そこを左に曲がるわよ」
二人が左に曲がると、ある住宅街に出た。点滅が激しい街灯が忙しなく大通りを照らしいて、光と闇が交互に顔を出す。
ジャッキーはそそくさと駆け足で三軒隣の家の芝生に足を踏み入れる。そのまま、自分の尻ポケットから一つの鍵を取り出した。
光司はキョロキョロと周りを見ながら、ジャッキーの後をついていた。そして家の前に辿り着くと、思わず驚いた。
ゲームで何度も見た家。ハゲかけた芝生に、ポキリとポストが頭を下げるように地面についている。水色に塗られた家は、今ではその明るさを出してはいなかった。
この家はジャッキーの家だ。物語序盤のことを思い出す。主人公であるラウルが家から聞こえてくる激しい音に気付いて、助けようと家に入るのだ。そこでラウルとジャッキーが出会う冒頭の中のシーンだ。
そう思った時、光司はふと考える。そういえばラウルはどこなんだろう?いつも一緒に行動しているはずの二人が、なぜジャッキーは一人で行動しているんだろう?
「コウジ?何ボーッとしてるの?早く入って」
ジャッキーの声に、光司は我に返る。ジャッキーは既に玄関を開けて、家の中に入っていた。光司は慌てて家の中に入る。
遠くからこちらに歩いてくる影にも気付かずに。
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