第5話「娯楽品と将来の事」
洗礼の儀の翌日、俺は女神様達からの娯楽品要求を思い出し行動に移ることにした。
娯楽品って言っても何がいいかなぁ? 一番作りやすいのはオセロなんだけど。でもオセロってすぐ飽きないか? 俺なら5回ぐらいやったらもういいやって感じになる。でも初回だし、一番簡単で作りやすい物でもいいよね。うん。
オセロを作るにあたって、とりあえず一番最初にしなきゃいけないのは材料の確保である。当然ながらそれがないと作れない。この家に材料があるかは分からないが、とりあえず外にある倉庫へ探しに行ってみよう。
屋敷の裏手にある倉庫に辿り着くと、庭師のローレルさんがその中でパイプを吹かして休憩していた。倉庫には庭師に必要な道具も保管しているし、給湯室なんかもあるからここで休憩していたのだろう。
このローレルさんの種族はドワーフ。現在73歳だが現役で、長年グレイナード家に仕えて庭の整備をしてくれているベテラン庭師だ。この人なら必要な材料がどこにあるかわかるかもしれない。
「おや、クロード坊ちゃんじゃねぇか! どうしたんだいこんな所に?」
「こんにちわローレルさん! 実はちょっと探し物してて…」
「探し物? 倉庫にか? 俺がわかる物なら持ってきてやるけど」
「えっとね、木の板っていうか、大きい木材なら切り株みたいなのでもいいんだけどあるかなぁ?」
「切り株?? そんなもん何に使うんだい」
「ちょっと工作っていうか、作りたいものがあるんだ」
工作ねぇ、と顎髭を触りながら考えるローレルさん。ヘソあたりまである白髭がドワーフダンディズムを醸し出している。バリカンで丸刈りにしたら気持ちよさそうだ。
「そうだなぁ。それならさっき古い木を切り倒したたところだから、それでいいなら持っていくかい?」
おお、ナイスタイミング! 古くても魔法で加工するから問題ないはずだ。
「それほしい! どこにあるの?」
「庭の奥にあるから案内すらぁ。これから切り分けなきゃならんしな」
「うん! 行こう行こう!」
ローレルさんの案内で、切り倒した木に案内してもらう。それは庭の奥の方に古くから立っていた巨木だった。かなり年季が入っているが、これならオセロの良い材料になりそうだ。
「これなんだけど、使えそうかい?」
「うん! 十分使えると思うよ。それで、ここからここくらいまで欲しいんだけど」
縦に1m分くらいを指定する。太さもかなりあるから、これだけあればオセロを作る分には十分なはずだ。余ったら他のことに使えばいいしね。
「そんなに使うのか!? わかったよ。切ったあとはどこに運べばいいんだい?」
「あ、運ばなくても俺の魔法で持って行くから大丈夫だよ」
「魔法で!? そういやリューネ奥様に魔法教えてもらってたんだもんな。たまに見てたぜ」
屋敷の裏手の練習場でやっていたから、ローレルさんに
「んじゃさくっと切っちまうぜ!」
「うん! 俺も手伝うね。『水よ刃となれ!
ローレルさんが斧を取り出し切り分け作業に入る。俺も水魔法で枝を全部幹から切り取った。よし、これで材料ゲットだ! 太い枝部分もオセロの石用に貰っていこう。切り分けた木材を【無限収納】に入れて、ローレルさんに礼を言う。
「ありがとうローレルさん! すっごく助かっちゃった」
「いやいや、俺なんかで役に立ててよかったよ。また何かあったら言ってくれや」
「うん! その時は宜しくね」
そう言ってローレルさんに手を振ってその場を立ち去る。早速部屋に戻ってオセロを作ろう。
自分の部屋に到着すると、【無限収納】から切ってもらった木材を床の上に取り出す。
「あとはこれを加工するための魔法を作らなきゃだな」
《魔法創造起動。
術式構成:物質を加工して、思う通りの形に変化させる。加工する物の硬度によって魔力消費量が変化する。
術式名:
※
これでよし。YESっと。
体の中から魔力が消費され、
「よし、サクッとやってみようか。
暫くして加工が終わり光が止むと、俺のイメージ通りの10枚のオセロ盤に変化した。
次に貰った太い枝部分を全て取り出し、これでオセロの石を作る。オセロ盤一つにつき64個。これだけあれば多分足りるだろう。石をオセロ盤10枚分、640個を作り終わったあとに色が着いていないことに気が付いた。
「あ、そっか。
しかしまだ慌てるような時間じゃない。色がなければ魔法で付ければいいじゃない。
《魔法創造起動。
術式構成:物質を自分の思う通り好きな色に着色する。
術式名:
※
こんな感じかな。YESっと。魔法が創造出来たので、早速
「よしっと。あとは乾かして完成!」
しばらく乾燥させて、無事にオセロ盤10セットが完成した。完成したはいいけど、これをどうやって女神様たちに届ければいいんだろう。一人で教会行くわけにもいかないし…。教会に行くには誰かに相談するしかないけど、行く理由が思いつかない。女神様にお届け物がしたいとか言ってもただのイタイ子認定されるだろうし。どうしようか。うーん…。
そんなことを考え込んでいると、部屋のドアをコンコンっとノックする音が聞こえてくる。
「クロード様ー、フィリスですが今大丈夫でしょうか?」
どうやらフィリスが部屋に来たようだ。何かあったのかな? 【無限収納】に完成したオセロと余った木材を全部仕舞い、ドアを開けてフィリスを迎え入れる。
「どうしたのフィリス?」
「あ、クロード様! 旦那様が書斎でお呼びなので呼びに来たんです!」
「父さんが? 何の用だろう」
「私は内容までは聞いてません。部屋に居たら連れてきて欲しいとしか…」
「わかった。すぐ行くからちょっと待ってて」
「はい! お待ちしていますね」
女神様へのお供え方法については後で考えよう。今は父さんの話の方が先決だ。すぐに支度を整えて部屋を出る。
「おまたせフィリス。それじゃ行こうか」
「はい!」
俺の部屋から移動して1階にある父さんの書斎の前まで行く。扉をノックをしてから父さんに声をかけると、書斎の中から父さんの入出の許可が聞こえたので中へと入る。父さんしかいないところを見ると、今日は秘書のオリビア母さんは不在らしい。
「失礼します。お呼びですか父さん」
「あぁ。フィリスは席を外しなさい。クロードと二人で話がある」
「かしこまりました。それではクロード様、失礼いたしますね」
「うん。呼びに来てくれてありがとう、フィリス」
「いいえー。それでは!」
フィリスが退出し、書斎の中で父さんと2人きりになる。周囲には嫌な静けさが漂っていた。……なんだろう、俺なんかしたっけ??
「クロード」
「はい!?」
ちょっと声が裏返ってしまった。
「いや…別にお前を咎めるために呼んだわけじゃない。クロードに聞きたいことがあってな」
「聞きたいこと?」
なんだろう、俺の性癖についてとか? 大きいおっぱいとポニテをしている女の子のうなじが大好きです。あと短パンを履いた時の太ももの張り具合とかに情緒を感じる。
「お前は将来、どうしたいと考えている?」
「将来…ですか?」
「あぁ。知ってのとおり我がグレイナード子爵家の家督は、このまま行けば順当に長男のマティアスが継ぐことになるし、次男のディオンは跡を継ぐマティアスのサポートに入るつもりでいる。フェリシアも、すぐにとは言わんがどこかの貴族に嫁に出すことになるだろう。それでクロード、お前は成長したらどうしたいのかを聞きたいのだ。お前の魔法の腕なら、成長すれば宮廷魔導師にもなれそうだがな」
…将来のことか。この異世界に生を受けてからたまに考えてはいた。俺の【魔法創造】のスキルがあれば商売もできるし、頑張れば宮廷魔導師にもなれるかもしれない。人生最大の夢はハーレム作ってウハウハすることだけど、そんなこと言ったら父さんにシバかれるのは目に見えている。それ以外だと……やっぱり1つしか答えは出てこなかった。
「父さん、俺は冒険者になりたい!」
やっぱり異世界と言えば冒険者だよね。せっかく異世界に来たのだから、色々な土地を巡って美味いご飯を食べながらいろんな種族の女の子と戯れてみたい。きっとそこには夢と希望とその他諸々が詰まっているに違いない。
「冒険者か。だが本当にいいのか? 冒険者は危険な仕事だ。強い魔物と戦い、命を落としいた者も多くいる。甘い仕事ではないぞ?」
「うん、わかってる。それでも俺は冒険者がいい。世界を見て回りたいんだ」
「…わかった。それなら冒険者としての勉強もしなくちゃならないな」
「冒険者の勉強?」
「そうだ。冒険者は脳筋のバカが多いイメージだが、実際はかなり頭を使う。植物の判別や迷宮の潜り方、魔物の倒し方や綺麗な解体の仕方とか、他にも色々学ばなければならないんだ」
へ~。言われてみればラノベでも冒険者に必要な知識は大量にあるって書いてあった気がする。
「うん! 冒険者の勉強したい! どうすればいいの?」
「そうだな…俺やリューネが教えてやってもいいが、今は仕事が嵩んでいて時間がない。そこで、お前を指導してくれる冒険者の家庭教師を雇おうかと思う」
おお、家庭教師! そんなのいるのか。
「王都に冒険者学園があるからそこに入れたいのだが、そこに入れるのは12歳からだからな。それまでは家庭教師を雇って教えてもらうといいだろう。お前の希望があれば聞くが、どうする?」
要望は色々あるが…大前提はこれだな。
「家庭教師になってくれる先生は女の人がいいかな。あと、厳しくてもいいから技術と知識がちゃんとある人がいい」
「……なぜ、女性がいいんだ?」
「男の冒険者ってむさ苦しくて怖いイメージがあるから、そういう人に教わりたくないっていうか…」
筋肉ムキムキのむさ苦しい男とずっと一緒とか拷問以外の何者でもないだろう。どうせ教えてもらうなら綺麗なお姉さんに手とり足とり教わりたいのだ。
「あぁ、まぁ言いたいことはわかった。お前の要望通りの依頼を冒険者ギルドに出しておく。ただ、すぐに来るかはわからんからな」
「うん、わかった。わがまま言ってごめんなさい」
「いや、自分の意見ははっきりと言えるようになっておいた方がいい。これからも何かあればすぐに父さんに言いなさい。出来るだけ力になるからな」
「うん、そうするね! …あ、あの父さん、冒険者ギルドへの依頼、俺が出してきちゃダメかな?」
「なに? クロードがか?」
「うん、自分の家庭教師になってもらうんだから、自分で依頼を出すのが筋かなって思ったんだ。ついでにそこで冒険者登録も出来たらなと思って」
ついでに教会に行って神様に貢ぎ物がしたいです。
「いや、ダメじゃないが…冒険者登録までしたいのか。冒険者登録をするにはギルドの審査を受けなければならんぞ? 年齢制限はないから登録が出来ないわけではないが…まぁお前の強さなら大丈夫か。それじゃ冒険者ギルドへはサムソンと一緒に行きなさい。それなら許可する」
「わかった、ありがとう父さん!」
父さんが”チリンチリン”と机の上に置いてあったベルを鳴らす。するとドアをノックする音が聞こえ、開けるとサムソンが立っていた。今の音が聞こえるとか今までどこにいたんだサムソン??
「お呼びでしょうか旦那様」
「ああ、クロードと一緒に冒険者ギルドへ行ってくれ。そこでこの子の冒険者登録と冒険者の家庭教師を雇う依頼を出して欲しい」
「冒険者の家庭教師…ですか?」
「ああ、クロードの要望でな。一緒に行ってやってくれ」
「畏まりました。それではクロード様、早速参りましょうか」
「うん! それじゃ父さん、行ってきます!」
「ああ、行ってらっしゃい。気をつけてな」
サムソンと共に父さんの書斎を後にする。さぁ、教会で貢物をしてから冒険者ギルドに行こう!
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