第ニ章 麗香


「不思議。」


「えっ?」


「こんなこと、今まで、人に話したことがない。なんだろう?麗香さんには、何でも話せる気がする。」


秋人の言葉に、麗香は優しく微笑んだ。


「ふふふ。私で良かったら、何でも話して。愚痴でもいいから。」


「うん。きっと、麗香さんが優しいからだね。」


にっこりと笑う秋人は、7歳の子供そのものだった。秋人は、麗香を見つめると、こう言った。


「麗香さんも、話してね。無理には聞かないから。麗香さんが話したくなったら、話して欲しい。僕に出来ることはするから。ねっ。」


「う………ん。」


何年ぶりだろう?こんなに温かく優しい人に触れたのは。何年ぶりだろう?こんなに穏やかな気持ちになったのは。麗香は、フッと、秋人から顔を背けると、うつ向いた。


「………泣いてもいいよ。」


「……えっ?」


遠くを見つめる秋人を麗香は震える瞳で見つめた。


「辛いんでしょ?……本当は、泣きたいぐらい、悲しいんでしょ?僕の前では、無理をしなくていいよ。僕は、まだまだ子供だけど……そういう気持ちは、とても、分かるから。」


「秋人…………!!」


どうして、こんなにも必要な言葉をくれるんだろう?

どうして、こんなにも言って欲しい言葉を言ってくれるんだろう?そうか。そうなんだ。


目の前にいるのは、確かに7歳の子供だけど。

彼は、大人以上の悲しみ、苦しみ、辛さ、寂しさ、そういう部分を知り過ぎているからなんだ。


麗香は、グッと強く、秋人を抱き締める。


「痛いよ、麗香さん。」


「…大丈夫。大丈夫だから。……私の前だけでもいいから、本音を吐いていいから。……弱音吐いてもいいから……!」


そういう部分をずっと、一人で我慢をして、隠してきたのだ。

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