第ニ章 麗香
「僕は、秋人。お姉さんは?」
「…………麗香。秋人ちゃんは、私が見えるの?」
「ちゃん呼ばわりしないでくれる?秋人でいいから。」
また幼い秋人は、妙に大人びていた。
「秋人……。」
「何?」
「えっ……あっ、呼んでみただけ。」
それを聞き、秋人は眼鏡をクイッと上げる。
「用もないのに、呼ばないでくれる?」
「あっ……あのう、ごめんなさい。」
「別に、いいけどさ。」
麗香は、うつ向くと、寂しい顔をした。秋人は、軽く息をつき、麗香の側に行くと、無表情で言う。
「麗香さん、ちょっと、屈んで。」
「……えっ?」
「いいから、早く!」
少し怒ったように秋人に言われ、麗香は、腰を屈めた。秋人は、右手を差し出し、麗香の頭にかざすと瞳を閉じた。
「あっ………。」
暖かい温もりを感じ、麗香は、声を上げる。ボロボロだったウェディングドレスが新品のように、綺麗に真っ白になった。
「よし。綺麗になったよ、麗香さん。」
にっこりと笑った秋人の顔に、麗香の瞳から、ポロポロと、涙が零れ落ちる。
「秋人………!!」
麗香は、秋人の身体を両手で包み込み、抱き締めた。
「ごめんね。僕には、麗香さんを成仏させることは出来ないんだ。僕は………。」
悲しく呟く秋人に、麗香は、首を横に振る。
「いいの………いいのよ。お願いがあるの、秋人。もう少し、私をここに置いて欲しいの。」
「うん、分かった。」
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