第一章 視えるんです
にっこりと笑う真琴に、佑樹は震える声で言う。
「俺も……連れて行ってくれ。」
佑樹の言葉に、真琴は首を横に振る。
「それは、出来ないの。佑樹、幸せになって。佑樹なら、新しい素敵な彼女が出来るよ。私…佑樹に出会えて幸せだよ。佑樹のこと、忘れないから。佑樹が幸せにならないと、私も、嫌だよ。」
「……真琴。」
秋人は、佑樹に向かって、静かに、こう言う。
「もう…逝かせてあげなよ。あんたがいつまでも、ここで泣くから、彼女、動けないんだよ。彼女を解放してあげなよ。幸せにしてよ。」
秋人の言葉に、佑樹は力無く尋ねる。
「逝くことが彼女の幸せなのか?」
それを聞き、秋人は、コクンと頷く。
「そうだよ。……冷たいようだけど、彼女は、もう……死んだんだ。」
佑樹は、その場に崩れるように座り、泣き叫んだ。
「…ごめん、ごめんよ、真琴!俺のせいで、お前は……。」
真琴は、優しく佑樹の身体を包み込むと、微笑んだ。
「ありがとう、佑樹。大好き。」
呟き、麗香の方を見ると、真琴は笑う。
「れいちゃん、ねっ、カッコいいでしょ?」
「うんうん、すっごく、カッコいいよ。まこちゃんも、すっごくすっごく、可愛いよ。」
瞳を潤ませ、麗香は言った。
「ありがとう、れいちゃん。ありがとう、秋人さん。」
そう言った真琴の身体が光に包まれ、大きく弾けたと思うと、スッと消えた。
「逝ったよ。とても、幸せな目をしてたよ。」
空を見上げ、秋人は呟く。春風が優しく吹く、4月下旬。
-第一章- 視えるんです【完】
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