第一章 視えるんです


-あれから一週間が経ち、少女は、秋人の家にいる。


少しずつだが、元の姿に戻ってきているようだ。

彼女の名前は、橘 真琴(たちばな まこと)。年齢は16歳。


彼女は、1年前。あの場所で死んだ。当時、付き合っていた彼氏と待ち合わせをしていて、わき見運転の車に跳ねられたのだ。即死だった。彼女を失ってから、彼氏は、ずっと、そこに訪れているという。そして、泣くのだと。彼が泣くから、彼女は動けずにいると。秋人と会った、あの日。やっと、動くことが出来た。秋人なら、何とかしてくれると思ったらしい。彼に伝えて欲しいことがあると言う。彼女の願いを叶えることなど簡単である。しかし、そのようなこと、いったい誰が信じてくれるというのか。言っても、信じてはくれない。頭のおかしな奴が何かを言ってると思われるだけ。そんなことを何度も経験してきた秋人。だったら、本人が直接、彼に会って伝えるのが良い。しかし、今、この状態の彼女を彼に会わせることは出来ない。せめて、元の姿に戻るまで、その時まで、ここで待つことにしたのだ。麗香とも仲良くやっているようだ。


「彼ね…とっても、カッコいいんだよ♪」


「そうなんだ~♪今度さ、私にも会わせてよ♪まこちゃん♡」


「いいよ~♪れいちゃん♡」


等と、恋ばなしている。


「幽霊も、恋ばなするんだ。」


ボソッと呟いた秋人の方を見て、二人は声を揃えて言った。


「するわよ~。だって、女の子だもん♡ねっ♡」


顔を見合せ、にっこりと笑う二人。


「はいはい。」


半分、呆れたように、秋人は笑った。

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