第一章 視えるんです
玄関のドアが開く音に、キッチンにいた麗香は、嬉しいそうに、そちらに向かう。
「お帰りなさーい。あらっ?お客様?」
「ただいま。うん…麗香さん、この子の話、聞いてくれない?俺じゃ、分からないんだ。」
麗香は、少女をジッと見つめると、にっこり笑った。
「あらあら、すごくチャーミング。可愛い♡いらっしゃい。」
少女の手を引いて、麗香は、キッチンへ向かう。
「お茶がいいかしら?それとも、コーヒー?お紅茶もあるわよ。」
何だか嬉しそうに、そう言いながら、麗香は少女を椅子に座らせる。少女は、椅子に座ったまま、ジッと、秋人を見つめている。
「大丈夫だよ。麗香さんは、優しい人だから。」
そう呟き、秋人は自室のある2階の階段を上って行った。自室のドアを開け、バタンと閉めると、カバンをベッドに投げ、秋人は、ユラユラと揺れる瞳で、遠くを見つめた。
『…もう、視たくないというのに……あんな悲しい目。』
「ねぇ、秋人は、何を飲む?」
「えっ!?…わっ!!」
驚き、そちらを見ると、ドアから顔だけを出し、麗香が優しく微笑んでいた。
「紅茶でいい?」
尋ねる麗香に、冷静を取り戻し、秋人は眼鏡をクイッと上げた。
「う、うん。麗香さん、そういう出かた、やめてくれる?」
それを聞き、麗香は、クスクスと声を上げ笑う。
「幽霊って、便利でしょ♪」
笑いながら、スゥーと顔を引っ込めた麗香に、フッと、口元に笑みを浮かべる秋人。
「やれやれ。」
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