第一章 視えるんです


「……帰ろう。」


へたり込んでる有里に手を差し伸べ、秋人は言った。有里は、秋人の手を取り立ち上がる。


「いいの?放っておいて。」


「俺には、何も出来ないよ。」


呟くと、秋人は先に歩いて行く。有里も、しばらく、その場にいたが秋人を追って駆けて行った。


-分かれ道。有里は、にっこり笑って秋人に言った。


「また、明日ね。明日は、ちゃんと学校へ来るんだぞ。じゃあね!」


「うん、じゃあ。」


有里に手を振り、彼女の姿が見えなくなるまで見送ると、秋人は腕を組み、軽く息をついた。


「さて……。君は、いつまで、ついて来るつもり?」


自分の右横を見て秋人は静かに、そう尋ねた。先程の少女が相変わらず口をパクパクさせ、秋人の隣に立っている。秋人は、右手をスッと上げると、人差し指を少女に向ける。


「消えたいの?」


しばらく、少女を見つめていたが、彼女の見つめる、その闇のような瞳に、フゥーと深く息をついた。


「仕方ないね。麗香さんなら、分かるかな?同じ幽霊だし。……おいで。」


優しく呟き、秋人は再び歩き出す。

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