視えるんです

第一章 視えるんです

「…………………。」

それでも、パクパク口を動かす少女に､秋人は呆れたように息をつく。

「…分かんないかな？俺は、あんたを成仏させることは出来ないんだ。消滅させることは出来るけど。分かる？消滅って言うのは………。」

そこまで言った秋人は､肩をポンと叩かれ、少し驚いたように振り向いた。

「何を独り言、言ってんだ？少年よ。」

中学時代から同じ学校だった､霧島　有里（きりしま　ゆうり）が立っていた。

「ゆ、有里。」

「学校サボって、こんな所で独り言？春なんで、頭の中も、お花畑？」

二カッと笑う有里に、秋人は顔を背ける。

「知ってるクセに。」

秋人の呟きに有里は､ハハハと笑う。

「ごめんごめん｡学校初日に無断欠席するから、何かあったのかと思ったけど。こんな所にいたんだ。何？何かいるの？」

興味津々に辺りを見回す有里をチラリと冷たく見つめ、秋人は落ち着いた声で言った。

「顔がパックリ割れた女が､お前にとり憑くって言ってる。」

「えっ！！……マジ？」

少し怯えた顔をした有里に､秋人は､フッと唇の端を上げ笑う。

「う・そ。」

「何だよ～、脅かすなよ～。」

あははと引きつった顔で笑った有里に､秋人は無表情で呟く。

「顔がパックリ割れた女がいるのは、ほんと。」

「そうなんだ～。………ええっ！！」

声を上げ、有里は秋人の背中の後ろに隠れた。

「何もしやしないよ。さっきから、何か話してるけど､分からないんだ。」

落ち着いた口調で言う秋人に､有里は少し震えた声で言う。

「秋人、落ち着いてんな。」

「慣れてるから。」

「そ、そうか。慣れ…てるか。私は慣れない。」

ヘナヘナと有里は､その場に座り込んだ。