第一章 視えるんです


-学校へ向かう途中にある公園まで走ると、秋人は荒い息を吐き、時計を見る。9時を過ぎている。


「はぁー……無理。どう急いでも、無~理~。」


独り言を言って、フッと、公園の入り口を見ると、一人の少女が立っていた。長い黒髪に赤いワンピース。いや、赤いワンピースではなく、赤く染まった白いワンピース。染めているのは、真っ赤な血。


少女は、ゆっくりと顔を上げると、秋人の方に顔を向ける。その顔は、ザクロのように、パックリと割れ、そこから滴り落ちる血が服を赤く染めているのだ。


秋人は、息を整え、黒の縁の眼鏡の端をクイッと上げた。


「何?」


何か言いたげに割れた唇を動かす少女に、秋人は冷めた口調で聞いた。


「聞いてやるから、言えよ。」


「………………。」


言葉を発しているのだろうが、ゴフゴフと血が溢れるだけで、何も分からない。フゥーと深く息をつき、秋人は静かに少女に近付く。


「言えないの?仕方ないね。…それじゃあ、先に言っとくよ。俺に頼っても、何も出来ないよ。あんたを上に逝かすことは出来ない。俺に出来るのは……消すことだけだから。」


秋人の言葉を真っ黒な闇の瞳で見つめ、少女は聞いている。

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