第一章 視えるんです
-学校へ向かう途中にある公園まで走ると、秋人は荒い息を吐き、時計を見る。9時を過ぎている。
「はぁー……無理。どう急いでも、無~理~。」
独り言を言って、フッと、公園の入り口を見ると、一人の少女が立っていた。長い黒髪に赤いワンピース。いや、赤いワンピースではなく、赤く染まった白いワンピース。染めているのは、真っ赤な血。
少女は、ゆっくりと顔を上げると、秋人の方に顔を向ける。その顔は、ザクロのように、パックリと割れ、そこから滴り落ちる血が服を赤く染めているのだ。
秋人は、息を整え、黒の縁の眼鏡の端をクイッと上げた。
「何?」
何か言いたげに割れた唇を動かす少女に、秋人は冷めた口調で聞いた。
「聞いてやるから、言えよ。」
「………………。」
言葉を発しているのだろうが、ゴフゴフと血が溢れるだけで、何も分からない。フゥーと深く息をつき、秋人は静かに少女に近付く。
「言えないの?仕方ないね。…それじゃあ、先に言っとくよ。俺に頼っても、何も出来ないよ。あんたを上に逝かすことは出来ない。俺に出来るのは……消すことだけだから。」
秋人の言葉を真っ黒な闇の瞳で見つめ、少女は聞いている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます