第一章 視えるんです


学生服に着替え、キッチンへ向かうと、麗香がテーブルの上に朝食を用意していた。


「秋人、朝ごはん食べるでしょ?」


「いらない。遅刻しそうだから。」


そう言って、玄関へ向かおうとする秋人の肩を掴むと、麗香は怒った顔で言う。


「折角、作ったのに!もう!だから、早起きしてって、言ってるでしょ?!」


「わかぁーったから、朝から怒鳴らないで。そして、手、冷たい。」


麗香は少し側を離れると、悲しいそうな顔をする。


「怒った顔も、可愛いよ。」


フッと優しく微笑むと、麗香の髪を撫でる秋人。


「えっ?…えっ?可愛いだなんて。」


顔を赤くして照れる麗香にクスッと笑い、秋人は玄関へ向かうと靴を履く。


「行ってくるよ、麗香さん。」


「ちょっ…!ちょっと待って!」


バタンと閉じた玄関のドアに、真っ赤な顔をする麗香。


「秋人------!!」


玄関の外、麗香の怒鳴り声を聞きながら、秋人はクスクスと笑う。腕時計を見た秋人は少し焦った顔をする。


「やべぇ、遅刻だ!」


バタバタと駆けて行くと、学校への道を急ぐ。


いつもと変わらない朝。本日も、晴天なり。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る