第十四章 当たり屋


みなさまは、当たり屋をご存知でしょうか?


わざと車に当たり、たいした怪我でもないのに、治療費などをまきあげる、そんな人達です。


昔、住んでた家の前は、大通りで、結構、大型のトラックなど走っていて、危険な場所でした。


そこに、当たり屋がいたんですよ。

母娘のね。


母親が幼い我が子をワザと押して、車にぶつけるというね。ひどい話です。


一度、二度、上手くいけたのでしょうね。


味をしめた母親が、いつものように、子供の身体をポンと押した。


いつもは、乗用車、まぁ、軽自動車などだった。

それでも、十分、危ないし、許されることではないのですが。


その日は、運悪く、大型のトラックでしてね。

子供は、あっという間に、トラックのタイヤに巻き込まれ、何回転も変な形に、身体を曲げながら、トラックの下を転がって、後ろのタイヤに巻き込まれたまま、やっと、トラックが止まった頃には、それは、悲惨なことになっていました。


頭は潰れ、手足もバラバラに、あっち向いたり、こっち向いたりしてるわけですよ。


もう、生きちゃいません。


なのに、母親は、その子の手を引いて

「帰るよ。帰るよ。」と何度も言いましてね。


目なんか、虚ろで、唇も紫色に変わっちゃって。


その後、警察や救急車が来まして、母親は、そのまま、パトカーへ。


事故を起こしたトラックを結構な時間、調べてまして、子供の頭が見つからないものだから、探していたんですね。


子供の頭、どこにあったと思います?


トラックの後輪に、ぺったんこになって、張り付いていたんですって。


まっ、それだけの話なんですけれどね。


もう何十年もの昔の話で、住んでた家も、もうありませんけれどね。






ー第十四章 当たり屋【完】ー

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