地球から少し離れたところにある夜しか知らない町。そんなSF感たっぷりの世界観がどのように展開するのか。冒頭から興味を惹かれました。タイトルにもある『初恋』が、ほろ苦く胸をきゅっと締め付けます。心理描写が巧みで、とあるふたりの登場人物の気持ちを思うと、ここに何かを書き込まずにはいられませんでした。しずかで物悲しくて孤独を背負った町を舞台にしているからこそ、初恋という熱源が、まるで夜空にまたたく星のように光る短編です。