架燐と桜子さん

紅葉色(イチ)

桜子さんと付き合って三週間――

演劇部のみんなやクラスの友達には付き合っていることを隠しながら、お昼ご飯や暇があったら桜子さんといつもの待ち合わせ場所にきて二人きりの時間を過ごす。

今日のお昼も待ち合わせ場所に向かおうと校庭に出た。


「ゆっず~!!」


その時聞き覚えのある声に呼ばれる。

声の方へ振り返ると、何年みてきたかわからない程見慣れた笑顔で走ってくる姿、架憐かりんの姿があった。


「ゆず、どこいくん?最近食堂にいないと思ったら外で食べてるん?」

「え、あ…うん、もう冬になっちゃうし外で食べられるのも今年今だけかな~って…」


花道架燐はなみち かりん。私の幼馴染であり親友、今年で十二年もの仲になる。架燐は親が関西人ってのもあって関西弁つかっていて、ぽや~っとしている私に対し、元気でしっかりとしていてよく面倒を見てもらっている。

だけど、なんでも言い合える親友だけど、あの学園で有名な『白雪姫の女騎士』、桜子さんとご飯食べてる、しかも二人きりでなんて簡単に言えなくて私は適当な回答をする。


「ふ~ん?じゃあ私も食べる!一人じゃ寂しいねん、一緒にたべようや!」

「えっ」


このまま一緒にお昼を食べたら桜子さんとの秘密バレちゃうかも…、私は必死にごまかす言葉をつなぐ。


「あっいや!他の友達、部活の人と食べる約束してて…」

「へぇそうなんや!じゃあ私もいれてや!部活中のゆず、どんなんかしりたいし!」


ま、ままま、まずいぃぃい!!!

断る理由もないし、またごまかしても嘘ついてたり話が変になるし…あわわ…どうすれば…


✿ ✿ ✿


――…断り切れなかった…とほほ…

結局あの後いいごまかしが思い浮かばず、架燐に手を引かれ行こうと催促され…うぅ。


「桜子さん…おまたせしました…」

とぼとぼと向かう先には、既に桜子さんが校舎裏で大きめのタオルを敷き待っていた。


「えっ!ゆず!白雪先輩なの!!?」

「う…うん……」

興奮する架燐を横目にチラッと桜子さんの顔をうかがう。


「…あら?揺河さんその方は?」

「花道架燐、私の幼馴染です…。偶然、そこで鉢合わせてついてきちゃって。」

「花道架燐です!ゆずの親友やらせていただいてます!白雪先輩はゆずと仲がいいんですか!?私初知りで!」


架燐がズイズイと桜子さんに迫っていく。


「え、えぇ…一応今作の演劇でメイン役同士でね、色々よく話すの。」

「そうなんだぁ!あ!一緒にお昼食べてもいいですか!?先輩たちの演劇のこととかゆずの部活中のこととか聞きたいです!!」

「もちろん、いいわよね?揺河さん。」


架燐の圧に少し押されていたがいつもみんなに魅せる表情へと変わり、さらにはニコッと微笑む私への笑顔には少し怒りを感じた。


「へ…ぁ、うん!もちろんですよ!あはは…」

少し笑顔を引きつらせ、私はタオルの上へと座った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る