第70話 恋の話 十三

 「中野さん、どうかされましたか?」

「いえ、大したことではありませんが…。前にも一度言ったかもしれませんが、平沢さんもそんな風に笑うんだなあと思いまして…。」

「そんなに私、笑わないイメージですか?」

「あ、失礼ならすみません…。」

「いえ構いません。確かに今日の私、いつもと比べてよく笑っていると思います。あと前にも少し話をしましたね。自分でも自分のイメージについては分かっているつもりです。

 でも中野さん、本当に哲学や心身問題がお好きなのですね。」

「はい、もちろんです!」

「中野心(しん)、だけに?」

「えっ…?」

 僕が少しびっくりすると平沢さんがすかさず、

 「今のは冗談のつもりだったのですが。」

と言う。

 「あ、そうですよね。

 でも、平沢さんも冗談言うんですね。」

「私は普段冗談は言いません。おそらく今初めて言ったかと思います。」

「え、それ本当ですか?」

「どうでしょう?」

そう言って、2人は笑った。

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