第18話 プロローグ 十八

 僕のそんな思いを変えたのは、年明けすぐの寒い日のこと。

 今はまだ1月だが、この年の4月から僕は大学4年生になる。周りの友達は就活関係で忙しくしているが、僕はとりあえず就職する予定はない。その代わり僕は大学院の入試を受けるため哲学や英語、また第二外国語のフランス語などを必死に勉強していた。

 『それにしても今日は寒いなあ…。』

 そう、その日はものすごく寒かったため、僕はかなりぶ厚めのダウンを着ていた。それはおしゃれというより、防寒対策によるもので…。またその色もくすんだもので、大学生というよりはサラリーマンか中年の男性が着るような雰囲気のものであった。そのため僕が大学ではなくオフィス街を歩いていたら、間違いなくその場になじみ、会社員と間違えられたであろう。それほど僕には「若者らしさ」が足りなかったかもしれない。

またファッションにある程度興味のある友達からは、

 「心、お前もっと見た目に気を遣った方がいいよ。」

と常々言われていたが、僕はファッションや自分の見た目にはあまり関心が持てない。

 『それよりも僕は研究の方が忙しいんだ…。』

僕は他の人からそんなことを言われる度、そんな風に思っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る