暗闇の王国へ

暗闇の王国へ(1)

 アリスとソラは、誰もいない監視所のホールを歩き。左には、昨日通った鏡の王国の紋章のドアが見え、真正面には暗闇の王国の紋章のドアが見える。

 2人は、暗闇の王国の紋章のドアの前に立ち、鍵の外れる音がし、ドアが開いた。ゲートをくぐると、2人は森の中にいる。

 アリスは辺りを見渡し。

「ここが暗闇の王国……もっと怖い所かと思ってたのに……」

「暗闇の王国と言っても、一日中暗いか。そうでないかの違いだけで……ほら、太陽もでているし。ただ、あと6日したら、何にも見えなくなる。それこそが暗闇だ」


 ソラは地図を広げ、予定通りに境界線の鏡の壁の道を歩いき、暗闇の城に向かうルートを考えながら、いったいどれだけの暗闇の家来が待ち受けているのか。どの場所で罠をしかけてくるのか。

 昨日の暗闇の王の作戦は失敗した。アリスが正義の紋章の力を使ったおかげでこの世の果てに捕まらずにすんだ。しかし、この辺りには暗闇の家来たちの気配は感じない。どうやら作戦の失敗に気づいていない様子。2人はこの隙に、先を急ぐことにした。


 鏡の壁の道は、向こうからはこちらを見えない。しかし、こちらからは向こうは見える。あの道には侵入は不可能のはず。気になるのは暗闇の家来がどうやって鏡の王国に侵入できたのか。とにかく暗闇になると向こうの方が有利になり、厄介なことになる。ソラはいろんなことを想定し、2人は、鏡の壁の道に向かった。

 しばらく歩くと鏡の壁が現れ、アリスは鏡に映る自分の姿を見て、私って、こんなだっけと思い、今まで全身の姿を鏡で見たことがない。鏡は周りを映し込み、森が映し出されている。昨日、ソラはこんなことを言っていた。

 この鏡の壁は、鏡の職人、鏡の番人、王族には鏡として見え。他の人間には鏡の存在がわからないように同化して見えると。アリスには紋章の力で鏡として見えている。


 休憩を挟みながらひたすら、真っ直ぐな道を歩く2人。先頭はソラ、そのあとをついて行くアリス。割と平坦な道ばかり、2人はどんどん歩いて行く。

 すると、アリスのお腹が鳴り、真上を見上げると、太陽がまぶしい。ポケットに入れていたパスポートを取り出し、時間を確認すると、11時55分。2人は昼食を摂ることにした。

 ソラは辺りを見渡し、暗闇の家来は感じない。辺りをうろついている様子も見えない。

 少し道を外れ森の中に入り、どこか座れる場所を探すと。大きな石を見つけ2人並んで座り、心地いい風が吹き、森の中でお昼となった。

 昼食は、今朝、フィリップが作ってくれたサンドイッチ。2人は美味しそうに食べ。食べ終わると、ソラはポケットから紐を取り出し、アリスのパスポートを借り、パスポートの角にある穴に紐を通し。

「アリス。これからは、首にこれを掛け、見えないように服の中に入れておきなさい……。ただ、その光で相手に築かれる場合があるから注意しなさい」

 アリスはパスポートを首に掛け、見えないように服の中に入れ。ソラは昨日から気になることが。

「アリス、1つ気になることがあるだが。昨日、監視所で、お姉ちゃんって、パスポートに言ってたようだけど、どういう意味だ?」

「あっ、あれ!? パスポートの名前」

「名前!? パスポートに? 初めて聞いたな」

「おかしいですか?」

「この世界では、パスポートに名前はつけない」

「そうなんだ、だったら、世界初ってことですね」

「そうだな」

 

 時を同じくして、2人組の暗闇の家来が。

「やつらめ、どこに行きやがった。暗闇ではそうはいかないからな」


 2時間ほど前、暗闇の家来たち2人は、フィリップの胸に着けた暗闇の紋章バッジを回収に行き、あの作戦が失敗に終わったことを知り。アリスたちが鏡の壁の道に向かうこと予測していた。そして、暗闇の王が作り出したという眼鏡をかけ、鏡の壁もすり抜けられる。

 

「兄貴、匂いがします……。パンの匂いです」

「何!? やはり鏡の道を通り、城に向かう気だな。そうさせない。暗闇の王様の邪魔をするも者は容赦しない。こちらには、このバッジとこの眼鏡がある。」

 ゆっくりとアリスたちに近づく暗闇の家来たち2人。


 アリスは赤の紋章が光っていないことを確認し、2人は、鏡の壁の道に戻ることに。

 その時、アリスの右側の方の木々の隙間から人影が見え、それもかなり大きな人影。

 その動きに気づいたソラは、アリスのパスポートを確認すると、危険を知らす赤の紋章が光っていない。暗闇の王の力が格段に増している、気配すら感じなかった。ここは鏡の壁で隔離され、そのせいで力が増幅されているのか。黄金の紋章を持っているアリスでさえパスポートが正常に機能していない。私のバッジの力も弱っている。想定外のことが起こってしまった。急いで鏡の道に戻るしかない、ソラはそう思い。


 その時、暗闇の家来の1人が。

「兄貴、いました! あそこです!」

「何……!? お前はあいつら後ろに周れ! 挟み撃ちだ!」

「兄貴、わかりました!」

 暗闇の家来たち2人は走り出した。

 その時、兄貴を名乗る暗闇の家来の姿が突然消え。そのことに気づいた暗闇の家来の1人が、まさかと思い引き返すと。

 まさかが当たった。暗闇の家来たちから、鏡の壁作りを邪魔されないために、あちこちに作られた落とし穴。鏡の壁が完成し、落とし穴は元に戻されたはずだった、それが残っていた。


 落とし穴を覗き込む、暗闇の家来の1人。

「兄さん! 兄さん、大丈夫!? 大丈夫!?」

「……クッソー、まだ残っていたのか。俺としたことが、うかつだった。落とし穴に落ちるとは……クッソー、足をやられた……足が動かない」

 落とし穴の穴はかなり深く、助けることができずに焦りだす暗闇の家来の1人は、何を思ったのか。

「アリス様! 兄さんが落とし穴に……アリス様お願いです! あなたのお力で兄さんを助けてください! 兄さんは王様に操られているだけなんです。お願いします。助けてください……!」

 暗闇の家来の1人は、泣きながら、助けを求めている。

 ソラとアリスは、落とし穴の存在を知り、落とし穴は全部元に戻したと聞いていた。ソラは、この光景を見て、逃げるなら今しかないと思い。

「アリス、今のうちに逃げるぞ!」

「なんで逃げるの? 助けないと」

「アリス、何を言ってる!?」

「ソラちゃん、ごめんなさい、見捨てるわけにはいかないの。お姉ちゃん、お願い。あの人を助けて!」

 すると、アリスの首にぶら下げていたパスポートが光りを放ち、落とし穴に落ちた、兄貴を名乗る暗闇の家来を透明な球体が包み込み、落とし穴から上がって来る。そこには、アリスの姿が見え。

「お前、なぜ俺を助ける……!? 何!? その紋章の輝きは……」

「お姉ちゃん、あの人のバッジを壊して!」

 すると、アリスのパスポートが、兄貴を名乗る暗闇の家来の胸に着けている暗闇の紋章バッジをめがけて光を放ち、暗闇の紋章バッジは一瞬にして砕け散り。アリスのパスポートに、思いやり、優しさを持つ紋章が追加されていた、これで黄金の紋章は3っとなった。

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