暗闇の王国へ(2)

 透明な球体は、暗闇の家来の1人のそばに降り立ち、透明な球体は消え。兄貴を名乗る暗闇の家来は、気を失っている。

「兄さん! 大丈夫!? 大丈夫!?」

 操りのバッジが砕け散り、操りから目が覚め、兄貴を名乗る暗闇の家来は、辺りを見渡し。

「私は……ここは、どこだ……? ダリル、私はいったい……」

「兄さん、足の怪我は? 大丈夫?」

「怪我!? 怪我はしてないけど」

「えっ!? 怪我が治ったの?」

 ダリルは立ち上がり、アリスに向かってお礼を言い、あのリュック事件を詫び、お城に行く道案内をしたいと申し出た。

 突然の申し出に、何も疑わないアリスは、この申し出を受け入れた。そんなアリスに困惑するソラは、そんな奴らの言うことを信用するなと言い。先を急ぐぞと、アリスに言うが。その場から動かないアリス、あきれるソラ。


 そんな中、兄貴を名乗る暗闇の家来が立ち上がり。

「ダリル、教えてくれ? この状況が把握できない。いったい何があったんだ? 私はなぜここにいる? 教えてくれ、ダリル」

 ダリルは、今までのことをすべて話すと。兄貴を名乗る暗闇の家来が、アリスを見て。

「アリス様、私はとんでもないことをしました。いくら操られたと言え、本当に申し訳ありませんでした。そして、助けてくれてありがとうございます。このご恩は、生涯忘れません」

 すると、ダリルはアリスに、私にいい考えがあると言い。この先にある小屋でそのことについて話したいと言うと。

 アリスは了解し、2人は落とし穴を避け、ぐるりと回り、ダリルたちの所に行った。

 ソラは、あきれかえりを通り越し、ダリルたちを信用はせずに、アリスと心中するような雰囲気になっていた。

 ダリルたち4人は、小屋に向かい、しばらく歩くと、大きな家が見え。その大きな家が小屋だと言う。大男から見れば、確かに、あれは小屋だ。


 4人は小屋に入ると、誰もいない。テーブルがあり、椅子が4つ。アリスとソラは1つの椅子に座り、ダリたち2人も椅子に座ると。突然ダリルは、自己紹介を始めた。

「私はダリル。こっちが兄のグレッグです」

「私はアリス、こちらがソラさんです」

「ダリルとか言ったな!? これはなんの茶番だ!? 私は騙されないぞ。ダリル、そのバッチはなんだ!?」

 ダリルの胸には、暗闇のバッチが。

「すみません、私は18歳です。このバッチは機能していません。だから大丈夫です。誤解です!」

「18歳!? 確かに、バッジは20歳にならないと機能しない。いや、それ以前の問題だ。18歳でバッジは着けられないはず。どうしてダリルがバッジを!?」


 そのことで、ソラは思ってもみないことを聞き、ダリルの想いを知る。


 実は、バッジはこの世界共通で、バッチをつけることができるのは選ばれたものだけ、20歳以上が対象となる。但し、王族は別。20歳以下には、バッチの効力はない。そして、バッジは身を守るものでもある。

 

 暗闇の王は、大男の住む村へ来た頃は荒れていた。暗闇の中をずっと耐えしのぎ、どうしてもスザンヌに会って、伝えたいことがあると言い続け。その様子を間近で見ていた大男たちは、暗闇の王に同情するようになり。2年が経ち、暗闇の王は、鏡の力を暗闇の力に変え。どうしたら、また、スザンヌに会えるのか考え。スザンヌが戻って来ると信じ、あの見張り小屋を建てた。

 しかし、スザンヌは戻ってこない。黄金の紋章のパスポートも持っていない。これ以上どうすることもできないまま時が流れ。いつしか暗闇の王は、大男たちの村で一緒に暮らすようになり、暗闇の王はとても優しく、穏やかな日々だった。

 しかし、太陽が8ヶ月も当たらない状況で、なんとか光を取り戻そうといろいろ考え。20年前から、太陽が当たらなくても、作物が育つよう工夫をし、それに成功。皆、楽しく暮らしていた。

 ところが、2年前。暗闇の王は、太陽の王の力が弱まったことに気づき。スザンヌに会いたい思いが再び蘇り、太陽の城へ忍び込み、太陽のドアの古文書を見つけ。これで、やっとスザンヌに会えると喜び。その時から、暗闇の王は人が変わってしまった。以前の優しい面影が消え。野心に満ち溢れた表情で、封印した闇の力を取り戻し。城を築き、最強の力を得たと、鼻高々に笑い。暗闇の住人たちは、元の優しい王に戻って欲しいと訴え。しかし、もう既に別人となり、家来をバッチで操るようになり。グレッグも城に呼び出され、ダリルはその後をついて行き、兄を心配するあまり20歳になったとウソをつき、バッチで操られていることがわかり、今まで操られた振りをしていた。

 ダリルは、藁をもすがる思いだった。アリスならきっと暗闇の王を元の優しい王に戻してくれる、そう信じ、知っていることを話し、ある作戦を考えていた。


 ソラは、この話を聞いて驚いた。太陽の王から、暗闇の王は、優しさのかけらもない、血も涙もない男だと、とにかくひどい奴だとののしっていた。あれはウソだったのか、そう思っていると。

 アリスはダリルの言うことを信じると言い。ソラも、ダリルがウソを言っているようには思えなくなり、信じることにした。


 その言葉にダリルは、目頭を熱くさせ、信じてくれたことに礼を言い、あの作戦を話した。

 すると、アリスはその作戦に、これ以上2人のことを巻き込みたくないと言い出し、ダリは驚き、こんな小さい子供が言うことなのか。そう思いながらもダリルはこの作戦を押し切って、アリスたち一緒に、明日午前8時に、暗闇の城に向かうことになった。


 アリスのパスポートの時計は、午後7時、少し遅い夕食になり。リュック入っていたパンを4人で少しずつだが分けて食べると。アリスは、ダリルとグレッグに、これで私たちは友達だねと言っていた。元の世界では、アリスに友達はいない。


 アリスは、グレッグにお姫様だっこをされ、屋根裏部屋へ行き。

「ねぇー、ソラちゃん。このベッド大きすぎて、面白いよ」、ベッドの上で、飛び跳ねている。

「アリス、ベッドの上で飛び跳ねるな、どんどん響いてうるさいぞ!」

「はーい、ごめんなさい」

「……ったく、あーしてると、普通の8歳の子供なんだけどなー、わからん」

 ダリルは、椅子に座りながらその光景に。

「ソラさん、あの子って不思議な子ですね。度胸はあるし、正義感はあるは、怖い者なしって感じですよね」

「いや、それはどうかな、内心は怖いと思うよ。私も怖いからな。あいつには、強い意志と揺るがない心が支えているような気もするが……。アリス、そろそろ寝なさい!」

「はーい」


 それから10分後、ソラたち3人も、テーブル近くにあるベッドに入り、皆、眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る