7年前の真実

7年前の真実(1)

 アリスは王の間を出ると、そこにはソラが待っていた。先ほど王の間では、鏡の王はソラにアリスの護衛を命じた。


「アリス様、行きましょうか?」

「鏡職人さん、そのアリス様ってやめてくれませんか? アリスって呼んで下さい、前みたいに。私たち、友達でしょう?」

「友達!? なつかしい響きだな。30になって、こんな娘みたいな子に友達とは……」

「鏡職人さんって、30歳だったんですね」

「言っとくが、私にも名前があるからな!」

「えっ!? 鏡職人さんって名前では?」

「なんだ、その冗談は? バカにしてるのか!?」

「だって、様とか言うから」

「わかった。対等ということでいいんだな?」

「はい。ところでなんって名前なの?」

「ソラだ」

「可愛い名前ですね」

「可愛い!?」

「そうだ! ソラちゃんって、呼んでいい?」

「ソラちゃんって、お前なー……」

「ねぇー、いいでしょう!?」

 すがるような目で見るアリス。

「そんな目で私を見るな……。わかった、わかった。仕方がないなー」

「ヤッター! ソラちゃんだ!」

「なんなんだ、こつは!? アリス、行くぞ!」

「はい! ソラちゃん」

「勝手に言ってろ!」


 この島には、鏡の力が存在する。心を映しだす力、物を隠す力、幻想を見せる力、光を生み出す力、他にもいろんな鏡の力がある。そして、古来より魔法のような力も存在し、この2つ力を組み合わせることもできる。但し、この力を使えるのは王族と選ばれし鏡の番人と鏡職人だけ。

 遠い昔は、空飛ぶ船があった。しかし、この島を守るため、その技術を封印した。ただ、4年前に移動手段を発展させるため、空を飛ばないことを条件に、暗闇の王を除く各王たちは合意し。段階的に一部の区域にその技術を使用し。アリスが湖で乗った船もその技術が使われ、陸上でも浮いて走れる。

 これからアリスとソラは浮く船に乗り、鏡の森を通り、この島の中心部にある、半径200メートルの円形状の形をし、まるで要塞のような監視所に行く。この島を守る監視所は、3年前にでき、暗闇の王を含め家来や住人たちの動きを監視し。監視所の内部には、各王国に出入りできる唯一のドアがあり。暗闇の王国のドアには鍵かけられ閉ざされている。

 アリスたちは、このドアの鍵を開け、暗闇の城に行かなければ、暗闇の王に会うことはできない。

 アリスたちは浮く船に乗り込み、鏡の森へ向かった。通常なら歩いて2日かかるところを2時間で鏡の森に着き。アリスの目の前には、大きなお屋敷が建っていた。

 アリスは鏡の森と聞いて、鏡がたくさんあると思い、辺りをキョロキョロしてもここは森の中、どこにも鏡らしき物が見当たらない。

「ソラちゃん、ここって、鏡の森なんだよね?」

「そうだが、どうかしたか?」

「鏡がないんだけど?」

「アリス、そのドア前に立ってみなさい」

「ドア!?」

 アリスは、言われるがまま透明なドアの前に立ち、驚いた。ドアが自動で開き、お屋敷の中入ると、まるで大聖堂のような雰囲気で、壁には大きな自画像の絵が1枚飾られ、その奥には、長い、長い廊下が見える。

「あれ? ソラちゃん、鏡は……?」

「奥に行けばわかるよ」

 アリスは、言われるがまま奥に行ってみると、驚いた。辺り一面鏡張りで、まるで鏡のトンネル。2人は、鏡の通路を通っていると、アリスはあることを思い出し。

「この鏡、私とソラちゃんだけ映っていて、普通の鏡だけど……」

「あぁ、そういうことか。それは正義の紋章の力だと思う。鏡職人と限られた人には、ただの鏡でしかない。それ以外の人が通ると、いろんな幻想が映し出されるらしい……」

 その時、何かの気配を感じたソラは立ち止まり。アリスも立ち止まり。

 すると、突然見知らぬ男が鏡に映つり。

「やはり来たか、待っていたぞ! アリス」

「……あなたは誰なの?」

「わしか!? わしは暗闇の王だ」

 アリスは驚き、少し鏡の王様に似ている、そう思い。暗闇の王はアリスを睨み。

「こんな小娘が、正義の紋章の持ち主だと!?」

「私、暗闇の王様にお話があります」

「わしに話だと!? 面白いことを言うな!? 小娘ごときに何ができる。太陽のドアはわしがいただく。お前らごときにわしの邪魔はさせん! 小娘! わしに話しがしたいならこの城に来るがいい。但し、わしの城に来ることができたならの話しだがな」

 暗闇の王は鼻高々に笑い、鏡の中に消えて行った。ソラは険しい表情を見せ。

「やはり太陽のドアを狙っていたか。しかし、どうやって私たちの動きに気づいた? アリス、心配するな、私がついている」

 2人は鏡の通路を進み、ドアが開き、太陽の光が眩しく。目の前には、要塞のような監視所が見える。

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