鏡の城

鏡の城(1)

 翌朝。

 アリスは目を覚まし、パスポートを見ると午前9時。あんな怖い思いをしたのにも関わらず、アリスは13時間も眠っていた。

「アリス。朝食をすましたら、鏡の城に行くわよ!?」

「パスポートさん。これからは、お姉ちゃんって、呼んでいい?」

「お姉ちゃん!? 仕方がないわね」

「ヤッター! ありがとう、お姉ちゃん!」


 アリスに、心強い味方できた。


 アリスは朝食をすませ、宿泊所の外に出て。宿泊所のドアに前に立ち、パスポートをポケットから取り出し。黄色の紋章を触り、ドアを開けると。宿泊所の中の風景はなく、目の前には真っ直ぐな道が見え、アリスは鏡の城へ向かった。

 鏡の城まで2時間の道のり。アリスは13時間も寝たおかげで、足の痛みもなく。山道を1時間ほど歩くと、小高い山の頂上に着き。目の前には湖が見え。あの湖より、かなり小さい湖。

「お姉ちゃん。本当に湖の真ん中に、お城があるの? ここからは何も見えないよ」

「見えなくて当然。お城は許可制になっているから、許可を得た者だけにしか見えない仕組みになっているの」

「私、許可なんかもらってないよ。どうやってお城に入るの?」

「そのことなら大丈夫。鏡の職人から預かった、鏡の王様宛の手紙とパスポートをお城の見張り小屋の番人に見せれば、鏡の王様に会えるから」

「わかった」

 アリスは山道を下り、森を抜け、湖が目の前に見えると、瑚面に太陽の光が反射しキラキラ輝いて綺麗。


「アリス、右側を見なさい。あれがこの城の見張り小屋よ」

 アリスは見張り小屋に行き、ドアの前に立ち、ドアをノックすると。ドアが開き、驚くアリス。そこには、あの鏡の職人のソラがいた。

「アリス、よく頑張ったな。よく1人で来た」

「鏡職人さん、なんでここに?」

 実は、ソラはアリスのことを心配していた。本当はアリスを1人で行かしたくはなかった。ただ、自分にはその資格がないと。

「アリス、既に王様には話してある。王様がアリスに会いたいと言っている」

「えっ!? 王様が私に!?」

 困惑するアリス。

「アリス、パスポートは!?」

 アリスはポットからパスポートを取り出し、ソラに渡した。

 すると、ソラは驚いている。

「……これは、正義の紋章……。実物は見るのは初めてだ……。アリス、これはいったい!?」


 アリスは、昨日の出来事を話し。パスポートと約束したことを守り、パスポートが喋ったことは話していない。実は、パスポートに喋る機能はない。


「なるほど、わかった。怖い思いをさせたな、申し訳なかった……。アリス、湖を見なさい」

 アリスは湖を見ると。そこには、さっきまで見えなかったお城が現れ驚き。アリスは更に驚いた。あの絵本に出てきたお城にそっくりだった。


 ソラは、アリスのパスポートを一旦預かり、このことを鏡の王に報告をしに行くと言い。アリスは、見張り小屋の前でソラの戻りを待つことになり。ソラは7分くらいで見張り小屋に戻り、アリスにパスポートを返し。アリスは、ソラの案内でお城に入ることに。


 アリスは見張り小屋に中に入り、ソラの後ろをついて行き。部屋の奥へ行くとドアがあり。ドアを開くと、階段を下り、平坦な道になり、地下道を通ってしばらく歩くと、またドアが見え。ドアを開くと、今度は階段を上り、またドアがあり、開くと。

 辺り一面にバラの花が咲き、噴水が見え。まさに、あの絵本と同じ風景が広がっていた。

 アリスは懐かしそうにその風景を見ながら、お城の奥へと案内され。王の間の扉の前には、家来が左右に1人ずつ立っていた。

 すると、王の間の扉が開き。

「アリス、あそこにおられる方が、王様と王妃様だ」

 鏡の王は、大きな椅子に座り。王妃はその隣に立っていた。


 ソラはアリスを連れ、鏡の王の所に。

「王様、アリス様をお連れしました」

「そうか、御苦労!」

 ソラはその場を離れ、王の間から出て行き。アリスは、鏡の王と王妃を目の前にして。

「初めまして、王様、王妃様。アリスです」

「よく来たな、アリス。私は、鏡の王、アランだ。こちらが王妃のアメリシアだ。話は聞いた。まだ8歳なのに、大変な目にあったな。大丈夫か?」

「お気遣いありがとうございます。大丈夫です。昨日は、怖い思いをしましたけど……」

「そうか。アリス、早速で悪いが、正義の紋章について話さなければならない。正義の紋章は、正義の心を持つ者に現れ。持ち主の身に何か起これば、その身を守ってくれる。その正義の紋章の力は、この世界の王と同じくらいの力を持つと言われている」


 突然そんなこと言われ、困惑するアリス。


 鏡の王はアリスをジッと見て。

「まさか、こんな子供に正義の紋章が現れるとは、史上2人目か……。アメリシア、さっきから何をそわそわしている?」

「感じるの、スザンヌの気配を」

「はぁ!? 何を言っている!? ここにいるはずがないだろう」

「でも、この手鏡が……」

 王妃は、いつも肌身離さず持っている。その手鏡を見たアリスは。

「あっ! その手鏡、私が持っているのと同じ物」

 アリスは手鏡をポケットから出し。

 すると、王妃はアリスのそばに行き。

「アリス、その手鏡を貸してもらえる?」

 アリスは王妃に手鏡を渡し、鳥肌が立つ王妃。

「この手鏡は、友情の証としてスザンヌにあげた物。どうしてアリスが持っているの?」


 アリスは手鏡を手に入れた経緯を話し。

 すると、王妃はその手鏡を持って鏡の王のそばに行き。鏡の王と王妃は、アリスに何も言わず、王の間の隣のへ部屋に入って行った。


 王の間に、ポッンととり残されたアリス。

 しばらくすると、鏡の王と王妃は王の間に戻り。王妃は少し目を赤くし。鏡の王は真剣な表情でアリスを見た。

「アリス、申し訳ないが事情が変わった。アリスに頼みたいことがある。その前に私の話を聞いてくれないか?」


 突然の申し出に困惑するアリスは、鏡の王の話を聞くことにした。

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