パスポートの秘密(2)

 アリスは前だけを見つめ歩き、道は真っ直ぐ続き、行きかう人はお年寄りばかり。1時間ほど歩くと。段々と山道になり、左側へ行く道が現れた。そこには、湖の名が書いてある立て看板があり、この湖を渡る。

 アリスは左に曲がり、山道を30分くらい歩くと。目の前に大きな吊り橋が見え、吊り橋の前に来ると。吊り橋の長さは150メートルくらいある。

 アリスは初めて吊り橋。2、3歩歩き、足元を見てしまい。高い所は苦手ではないけど、吊り橋の高さは100メートルくらいあることに、急に足が竦み動けない。

 辺りを見渡しても誰もいない。急に心細くなり、風が少し吹き、橋が少し揺れ。とにかく1歩ずつ前に行けば、必ず向こうに渡れるはず、そう思ったアリスは、下を見ず、なるべく前を向いて1歩ずつ歩き出した。何とか、橋の半分くらいまでくると、また足が竦み動けず、その場に座り込んだ時だった。


「アリス、頑張れ!」


 この声は、胸のポケットにしまってあるパスポートと同じ声。

 アリスは、その声に励まされるかのように立ち上がり。また、1歩ずつ歩き出し。ふとさっきの声とあの水車小屋で聞こえた声は同じだと思い。でもお姉ちゃんの声ではない。もの凄く似ているけど違う。アリスはそんなことを考えて歩いていたら、いつのまにか橋を渡り切っていた。


 これから先は、アリスにとって初めての山登り。足は少し痛み始め。それでも、歩いて、歩いて、周りの景色を見る余裕もなく歩き続け、山頂にある山小屋が見えた。

 山小屋の前まで来ると。心地いい風を感じ、山小屋には入らず。近くにあった、木で作ったテーブルと長椅子があり。そこにリュックを置き、パスポートを見ると午前12時。地図によると、この山頂から湖が見えるはず。

 アリスは湖が見える場所に行き、山を見下ろすと。湖の大きさに驚き。何を思ったのか、さっき登って来た道の方の景色を見に行き。どこが鏡の王国なのか、そう思いたくなるほど自分のいる村より遥かに緑豊かな自然が広がり、たくさんの家や畑が見え、しばらくこの景色を見ていると。お腹が鳴り、昼食を摂ることに。


 アリスは、リュック中からパンとハムを取り出し、美味しくいただき。少し休憩をしたおかげで、足の痛みは軽くなり。また、歩き始めた。

 今度は山を下り、歩き続け、2時間経ったころ、湖が目の前に見え。この湖を渡る船乗り場を探し始め。

 すると、湖のすぐそばに小屋を見つけ、行ってみると。あのおじいさんにそっくりなおじいさんが小屋の前に。

 アリスは声をかけた。

「あのー、すみません。ここって、船乗り場ですか?」

「……そうだが、お嬢ちゃん、1人かい?」

「はい、そうですけど」

「親御さんは、いないのかい?」

 

 アリスは、あのおじいさんに言われていた。この先、太陽の王国のこと、この世界の人間ではないことは、多言しないようにと。


「今はいません。いろいろ事情がありまして」

「そうかい。大変だな……」

「あのー、船は?」

「そうだったな。ちょっとここで待っていなさい。今、船の準備をするから」


 しばらくすると、船の準備ができ。船着き場に案内されたアリス。そこには大人が10人くらい乗れる船が。アリスは船に乗り込み、乗船客はアリス1人だけ。


「お嬢ちゃんは、この船は初めてかい?」

「はい」

「5分くらいで着くからな」

「えっ!? 5分で着くんですか? 向こう岸が見えないほど遠いですよ!?」

「こいつは水の上を飛ぶからな。速いぞ」


 すると、船が水面より少し浮いき、飛ぶように走り出し。確かに、飛んでいる。

 湖面に太陽の光が反射してキラキラ光り、この船があまりにも速すぎて、アリスは周りの景色は見る余裕がなく、ただ前を見ているだけで、あっという間に反対側の岸に着き。アリスは、また歩き始め、第5エリアのドアへ向かった。

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