新たな、不思議な世界へ
新たな、不思議な世界へ
アリスは目を覚ますと、真っ暗で何も見えない。あれからどれくらい眠ったか、今は夜。明かりを点けようと、机の上にあるランプを。
すると、手探りで机を探すが机がない、本棚もない、辺りには何もない。辺りをキョロキョロするが、真っ暗すぎて何も見えない。もしかしたら、ここは水車小屋ではなく、あの絵本の中のか、そう思ったアリスは目を瞑り元いた場所へと願った。これで現実の世界へ戻れるはず。しかし、目を開けても元いた場所には戻ってはいない。だったらこれはただの夢。そう思って頬をつねってみると。痛い。これは夢じゃない。何がなんだか分からなくなり。暗闇に包まれ、怖くて、怖くて、一歩も動けない。アリスは泣いてしまい、泣き疲れ。その場に眠った。
「アリス起きなさい。いつまで寝てるの!?」
耳元でアリサ声が聞える。
アリスは目を覚まし、目をこすりながら顔を上げると。目の前には見知らぬ老婆が立っている。手にはランプ持ち、アリスの顔をジッと見ている。
「お嬢ちゃん、こんな所で寝ちゃだめだよ。ここは暗闇の王国と鏡の王国の境界線だからね」
「暗闇!? 鏡!? 境界線……!?」
「後ろを見てごらん」
アリスは立ち上がり、老婆の言う通りに後ろを振り返ると。
先程まで辺りは暗闇で何もなかった。しかし、辺りは暗闇だが、目の前には建物が見え、玄関らしき場所に明かりが点いている。
その建物は大きく、アリスの身長の3倍くらいの大きなドアが見え、アリスは玄関先に立っていた。
「おばあさん。この家は何?」
「見張り小屋だよ」
「見張り小屋!?」
老婆が言うには。ある女性を待つ為に造られた見張小屋。暗闇の王国と鏡の王国の境界線上に建っている。ここに迷い込んだ者は、パスポートを持たない者。即ち、異世界からの侵入者とみなし、この見張り小屋が現れる。
アリスは後ろを振り返り。パスポートって何と聞くと。
老婆は、懐中時計を見ている。
「お嬢ちゃん。この世界で生きるには、自分の意思で決めないといけない。ここは時間に厳しい世界。くれぐれも、この世の果ての世界には絶対に行かないように。あそこにいったら絶対に帰ることはできない。気をつけなさい。もう時間がない。これから先はあなた自身で決め、運命は自分で切り開き、これからどうすればよいのか、よく考えなさい」
そう言うと、老婆は暗闇の中に消えて行く。
「おばあさん、自分自身で決めるって、どういうこと?」
老婆の姿は、もう見えない。
「誰だ!? 境界線で喋っているのは!?」
怒鳴り声が響き。
アリスは驚き、後ろを振り返ると。そこには見たこともない、大男が玄関前に立っていた。
「お前、どこから来た!? 異世界の者だな!?」
大男はアリスを見下ろし、睨みつけた。
アリスは怖く返事ができない。
「答えられないのか!?」
アリスはその声に驚き、泣いてしまい。
すると、玄関からアリスと同じくらいの背丈の男が出てきた。
「大きな声を出して、なんの騒ぎだ……!? なんで、子供がここに!? 泣いているのか!?」
アリスは泣きながら、その男を見ると、優しい顔したおじいさんだった。
その男は、大男を見上げ。
「暗闇の番人、これはどういうことかね?」
「こいつが何にも喋らなから、つい大声で、すみませんでした、鏡の番人」
鏡の番人は、アリスを見て。
「パスポートを持っていないようだが、どこの世界から来たのかね?」
優しい声で接する鏡の番人。
アリスは涙を拭きながら、ここに来た経緯を話すと。
「そういえば、確か、何年も前にあんたと同じくらいの女の子が同じようにパスポートを持っておらず、ここで泣いていた女の子がいたな。そういえば、ここではない別な世界から来たとか言ってが……ダメだな。その後が思い出せない。年にはかなわないな、最近、物忘れがひどくて……」
「その女の子は、元の世界に戻れたの?」
「なぜそんなことを聞く? 元の世界には帰りたくないだろう?」
「私は、絵本の中に行きたかったの、でも、ここは違う。確かに、私は絵本の中で暮らした方がいいと思った。だって、約束破ったんだよ。帰ってくるって言ったんだよ。私がどんな想いで待っていたか……それなのに……」
アリスは、あの時の光景を思い出し、また泣いてしまい。
「申し訳ないが、この世界に来た以上はここで暮らして行くしかない。あれ!? ちょっと待てよ。あっ、そうだ。 鏡職人のあいつなら、その女の子のことを覚えているかもしれない」
その時、暗闇の番人が懐中時計を見て。
「鏡の番人、あと30分くらいで見回りの番人が来ますが、この子供は渡した方が」
「わかっている。ただ、この子をこの世の果の番人に渡すのは」
「しかし、それでは、鏡の番人が責任を」
「このことは、私に任してくれないか? 私に考えがある」
「……わかりました」
「お嬢ちゃん。名前は何と言うのかね?」
アリスは涙を拭きながら。
「……私の名前はアリス、年は8歳です」
「アリスか、いい名前だ。しかし8歳しては、先程の経緯を聞いた時に、教養があるように思えるが」
「絵本とか辞書も読んだし、いろんな本を50冊くらい読みました」
アリスは、アリサの本に対する気持ちが知りたくて、本を読んでいた。
「なるほどね。もしかしたら、アリスの住んでいる世界とこの世界は繋がっているような気もするな」
「あのー、すみません。パスポートってなんですか?」
パスポートとは、この世界で暮らす為、6つの国を行き来するため、生きた証を証明するもの。
鏡の番人は、ある思いを胸にアリスに、パスポートを作ることを決め。
「アリス。手を出しなさい」
アリスは言われるがまま、手を差し出した。
すると、大人の手のひらくらいの大きさの、四角い薄い木のような物が現れ。見ると、アリスと名前が書いてあった。
鏡の番人は、真剣な表情で。
「このパスポートをもしなくしたら、2度と作ることができないから、気をつけるように。アリス、暗闇の王国に行くか、それとも鏡の王国に行くか、決めなさい」
アリスは自分で決めないといけない現実に、急に不安が襲い、泣き出し。鏡の番人は、それを見て。
「教養があっても、8歳は8歳ということか。アリス、10分間だけ時間をやる。その間に決めなさい」
鏡の番人は見張り小屋へ入って行き。暗闇の番人も見張り小屋へ入って行った。
1人きりになったアリスは、どうすればいいのかわからない。
「アリス、あなたなら大丈夫。自分を信じなさい。あなたが決めるのよ」
アリサの声が聞えた。
「お姉ちゃん。どこにいるの?」
アリスは泣くのを止め、辺りを探した。しかし、アリサはどこにもいない。
その時、突然アリスは何を思ったのか、パスポートに向かって。
「パスポートさん。教えて、私はどうすればいいの?」
すると、パスポートから声が聞こえ。
「アリス、よく考えなさい。鏡の番人が話をしたことを」
アリスは、鏡の番人が話したことを思い出し。
「……わかった。そうか、そう言うことか、鏡職人だ」
10分経ち、玄関から鏡の番人が現れ。
「そろそろ時間だな。アリス。どちらの王国に行くか決まったかね?」
「はい! 決まりました。鏡の王国に行きます」
「そうか、少しは元気が出てきたようだな。よく1人で決めたな。よろしい、右側を見なさい」
アリスは言われた通りに、右側を見た。
すると、暗闇の中からドアが現れ。鏡の番人が、パスポートを見るようにアリスに言い。
アリスはパスポートを見ると、鏡の形をした印が現れた。
「鏡の番人さん、この鏡の印はなんなの?」
鏡の番人に話しによると。鏡の印は、紋章と言って、そこに現れた紋章は、6つの王国のどこの王国に行ったかを表す証。行く先々の王国で紋章がことなり、カウントされ。そして、その紋章を左手の人差し指で押し当てて、しばらくすると、今まで起こった出来事が見えてくる。それをどう使うかは自分次第。
鏡の番人は真剣な表情で。
「さぁ、行くがよい。早くしないと、見回りの番人が来る。急ぎなさい」
「はい! ありがとうございました」
アリスは笑顔で答え。
「その笑顔を忘れるな。それと……すまない」
「えっ!? すまないって、どういうこと?」
「なんでもない。最後に1つだけ言い忘れていた。そのパスポートを私が作ったことは、誰にも話さないように。くれぐれも頼む!」
「秘密って、ことね。わかった」
「約束したからな」
「はい! 約束は必ず守ります。絶対に喋らないから、安心して」
「頼んだぞ!」
すると、鏡の番人は見張り小屋に入って行き、見張り小屋は暗闇に消え。アリスは、鏡の王国のドアを開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます