アリスと不思議な絵本(2)

 アリスは水車小屋に通い、ちょうど50冊目の本を読み終えた次の日。水車小屋行く途中で、あの3人組の男の子がアリスに近づいて来る。

 アリスは、あの3人組の男の子に会わないように時間を考え、この道を通るようにしていた。しかし、もう間に合わない、隠れる所がない。目線をそらし、なにくわぬ顔で通り過ぎようとすると、3人組の男の子の1人がアリスを見て。

「アリスのお姉ちゃんって、お屋敷の子になるんだって!?」

 その言葉に、アリスは立ち止まり。

「誰がそんなことを言ったの!?」

「うちのお母さんがそう言ってたよ」

「……そんなの嘘よ! 嘘に決まってる! 私、お姉ちゃんと約束したんだから……」


 この男の子の母親は、あのお屋敷の家政婦しており、アリスもそれを知っていた。

 アリスは思ってもみないことを聞き。帰って来ると信じていたのに、約束したのに、その想いが崩れてしまい。その場を逃げるように走り、泣きながら水車小屋へ行き、屋根裏部屋で泣き崩れ。泣き疲れ、その場に寝てしまい、どれくらい眠ったか。

 目を覚まし、その時、突然本棚の1番下、右端の本が光始め、アリスは驚いていると、光が消え。おそるおそる、その本を手に取ってみると、表紙を見て驚いた。

 そこには、『不思議の国のアリス・続編』と、書いてあった。本棚を掃除した時は、そんな本なかったはずなのに、訳がわからない。

 同じ名前、本の中身がきになり、ページをめくってみると。いままでに見たことのない絵本。絵本を見みながら、「この絵本の世界に、行けたらいいなー」と、呟いた瞬間、目の前が光り、とっさに目を瞑り。目を開けると、アリスは茫然とした。それもそのはず、目の前は、今見ていた、絵本そのままの景色が広がっていた。


 アリスは、大きな木の下に立っている。着ている服は、絵本の主人公と同じ服を着ている。

 すると、後ろから声が聞こえ、後ろを振り返ると。絵本にて出てきた、あのウサギだった。

「あー忙しい、忙しい、何であんなにこき使うかねー、こまった女王様だよ……」

 ウサギは、アリスに気づき。

「アリス様、こんな所で、何をなさっているのでしょうか?」

「私はアリスだけど、絵本の中のアリスじゃないの」

「アリス様。何か、変な食べ物を召し上がりましたか?」

「食べてません。だから、私は、絵本の中のアリスじゃないの!」

「アリス様、そういえば、いつもと雰囲気が違うような気が……」

 ウサギは、考え込み。アリスはこれまでの経緯を話した。

「なるほどね。その話が本当なら、入り口があるなら出口もあるはず。だったら、帰りたいと強く願えば帰れるのでは、おっといけない」

 ウサギは懐中時計を見て。

「アリス様、時間がないので私はこれで失礼します。いまから女王様の所に行かないとなりませんので」

 ウサギは走って行き。アリスは、ここが絵本の中なら夢と同じと思い、頬をつねってみた、痛くない。だったら、うさぎの言う通りにしてみようと、目を瞑り、帰りたいと強く願った。

 すると、目を開けると、あの水車小屋の屋根裏部屋に戻り。もう1度、同じことができるか、やってみた。

「絵本の世界に行きたい」、そう呟くと、絵本の中にいる。

 これを機に、毎日絵本の中で遊ぶようになり、現実から逃げるようになったアリス。月日が経ち、アリサの帰ってくる日が来た。


 アリスは今日も、あの水車小屋に行こうとしている。それを見た母親は。

「アリス、どこに行くの?」

「遊びに行くの」

「何言ってるの!? 今日はお姉ちゃんの帰って来る日でしょ!? あんなに会いたかった、お姉ちゃんが帰ってくるのよ」

「そんなの嘘よ! 私、知ってるよ。近所の男の子が言ってた。お姉ちゃん、あのお屋敷の子になるって」

「はぁ!? お母さん、そんな話し聞いていないよ!? きっとからかわれたのよ?」


 その時、玄関の方から声が聞こえ。

「すみません。屋敷の使いの者ですが、いらっしゃいますか?」

 予定の時刻より、アリサが帰って来るのが早い。母親は、急いで玄関の所へ行き、玄関をあけると、見知らぬ男性が立っていた。

「アリサ様のお母様でしょうか!? 本日、アリサ様をお連れすることができなくなりました」

「えっ!? どういうことですか? アリサは、帰ってこないと言うことでしょうか?」

「いえ、そう言う訳ではありません。実は」


 この時、アリスは母親の少し後ろで聞いていた。

「だから言ったのに、帰って来ないって!」

 アリスは泣きながら家を飛び出し、あの水車小屋へ向かった。


 アリスは水車小屋の屋根裏部屋に行き。現実を突きつけられ、どうしていいのかわからなくなり。

「もう私、絵本の世界で暮らす。もうお家には帰りたくない!」

 アリスは泣きながら、あの絵本を抱きしめ、泣き疲れ、その場に眠った。

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