第10話

 デュロイの目に映るのは黄金に輝く満月と人狼の瞳、白銀に輝くダガーの刃、深紅の火を灯すミーナの瞳。

 ミーナは身体を捻って人狼の頭上に着地すると体毛を鷲掴みにして体を支え、ダガーを大きく振りかざし、躊躇ためらいなく人狼の右目に突き立てる。


「ぎぃゃあああぁぁぁぁ!」


 再びの絶叫。

 人狼は激しく首を振り、頭にしがみ付くミーナの小さな体を鷲掴みにしようと左腕を伸ばす。


「させぬ!」


 デュロイが人狼の腹に刺さったハルバードを乱暴に引き抜き、上半身を捻って最大限に振り被り、そして、ハルバードを薙ぎ払う遠心力に渾身の力を乗せる。

 月光に煌めく刃が円を描き、人狼の胴を横一文字に振り抜く。

 人狼の巨躯が胸の辺りで横にずれ、血が噴き出す。肺と心臓と脊椎を胸郭ごと両断された人狼は断末魔も無く絶命した。


 ミーナは人狼の頭から飛び降りてデュロイに抱き着き、その勢いのまま押し倒す。

 深紅に輝く瞳が組み敷かれたデュロイを映し、その背後で人狼が光となって蒸発した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る