第6話

 モフパカの背に乗ったミーナはデュロイを先導して再び森の泉にへ向かう。


「魔物の気配はないわ。デュロイがあらかた倒しちゃったもんね」

「ヒュージモンスターが居る」

「あの叫び声は魔獣型の巨大種、ライカンギガント。馬鹿でかい人狼ライカンスロープよ。出現はしたけど活動してる気配もないし、日の出てるうちは寝てるんじゃない?」

「よく知っているな」

「さっきも言ったとおり、弱者には弱者なりの戦い方があるのよ。でも、今回は運が悪かったわ。 ……もふみちゃん、おすわり」


 ミーナがモフパカを止めて伏せさせるのに合わせて、デュロイも装備と荷物を地面に置き、その場へどかっと腰を下ろした。


「よっと、ん、大丈夫ね」


 ゆっくりと足元を確かめるようにモフパカから降りたミーナは、少しよろめきながら置き去りにした荷物の元へ歩み寄る。


「やった、荷物も無事だわ!」


 荷物を確認して機嫌良く呟くと、荷物を引きずりながらデュロイの隣に座る。


「さて、ちょっと休憩しましょ」


 キラキラと木漏れ日が揺れる森の中の泉のほとり、モフパカの腹を枕にして寝そべるミーナと地面にどっしりと胡座をかいて座り込むデュロイが穏やかな休息の時間を過ごす。


「この後どうするの? 一緒に戻る?」

「ヒュージモンスターを倒す」

「はぁ? 一人で? 本気?」

「本気だ」


 事も無げに言うデュロイに、ミーナは驚きと呆れの混じった表情で溜め息をつく。


「……やめといた方が良いわ。ライカンギガントは中級冒険者のフルパーティーで丁度釣り合うくらいの相手よ」

「目の前に現れたヒュージモンスターを見逃すことはできない」

「止めても無駄かしら?」

「ああ、倒しに行く」

「そう。あなたの強さなら無理とは言わないけれど、無茶ではあるわね。なにより時間が悪いわ、日の入りまで後一刻半いっこくはんってところかしら。日が沈んだら倒せなくなるわよ。 ……良い? ライカンギガントは人の倍近い大きさで、前足のリーチがそのハルバードと同じくらい。爪は鋼鉄並みで一発でも貰うと致命傷になる。だから隙が大きくて両手が塞がるハルバードでは戦えないわ。使うとすればそっちね」


 デュロイの傍らにハルバードと共に置いてある片手剣と盾に目をやる。


「盾で身を守りながら剣で四肢にダメージを与えて、抵抗できなくしてから止めを刺すのが妥当かしらね」

「ああ、その通りだな」

「あと、あたしも一緒に行くわ」

「ダメだ」


 デュロイは間髪入れずに言い放ち、立ち上がる。


「あたしの忠告は聞かないくせに、全く身勝手だこと。どれだけ断られても着いていくわよ。倒すのを諦めるか、二人で行くか、どちらか選んで」

「一人で行く。足手まといだ」


 無視するように装備を整えるデュロイの背中を見て、ミーナはぷぅと頬を膨らませる。


「……本気で奴を倒す気なら絶対あたしと行った方が良いわ」

「勝手にしろ。時間が惜しい」

「よろしく、デュロイ。 ……おいで、もふみちゃん。ちょっと重いけど我慢してね」


 ミーナはデュロイの荷物をもふみに背負わせ、ハルバードを担ぐ。


「おも…… よくこんなもん振り回せるわね」

「行くぞ」

「うん、案内するわ」

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