第4話
爆竹が爆ぜる音が響くと、低い唸り声を上げながら藪を掻き分けて、銀の被毛に暗色の
「
腰に提げた道具袋から赤い液体の入った小瓶を取り出して一口あおると、途端にミーナの瞳に深紅の輝きが灯る。
「……行くわよ」
眼前の獣を見据えてダガーを握り直し、薄笑いを浮かべる口角に八重歯が光る。
猟狼は低く構え、全身のバネを使ってミーナの喉元に食らいつこうと飛びかかる。ミーナはその瞬間身を屈め、跳び上がった猟狼の下に潜り込み、爪を掻い潜って喉元に刃を突き立てる。
勢いに押し倒される体勢でダガーを持つ両手に力を込めると、着地の衝撃で猟狼の喉の奥深くに刃が飲み込まれた。
猟狼が光と共に蒸発し、後に魔石が結晶する。
のし掛かる猟狼の身体が消滅した瞬間に跳ね起き、一番近くの木に背を着けて辺りをうかがう。茂みの陰に光る眼が二匹、三匹と獣の存在を知らせ、さらに周囲の気配も濃くなっていく。
ミーナは囲まれないよう木立に半身を預けながら木々の間を縫うように猟狼の群れとの間合いを測りながら移動する。
追い付いた一匹が飛びかかろうと身を屈めるのを見て、くるりと木の裏側に隠れて後方の茂みに拾った石を放り投げる。
陽動に掛かって茂みの方を狙う猟狼の死角から飛び出し、無防備な首に勢い良くダガーを突き刺して体重を掛け喉を切り裂く。
「ふぅっ」と強く一息はくと、止めを差した猟狼の消滅を待たず、また手近な木の陰に身を隠す。
「はぁっ、はぁっ、んぐっ……! ……はぁ、きっつぅ」
瞳に灯った真紅の光が弱まり、ミーナは木の幹に寄りかかってぼやきながら息を整え、ダガーを握る右手をだらりと降ろし、周囲に気配を感じながら左手で道具袋を探って手のひらに収まる程の玉を取り出す。
「良い子ね、こっちに来なさい。イイモノあげるわ」
「グルルルルルル……!」
声につられるかのように正面の茂みから姿を現した猟狼にニヤリと笑って言い放ち、同時に呪文を詠唱して玉をその足元に転がした。
「ふふ…… ワンちゃん。ボール遊び、好きでしょ?」
ドォン!
その瞬間、強力な閃光と爆音と共に玉が弾け飛び、猟狼は爆発の直撃を食らい
仲間が爆殺され、その爆発音と閃光に周囲の猟狼が怯んだ隙にミーナは気配の薄い方向へ駆け出し、再び猟狼の群れと距離を取って木の根元に座り込む。
「はぁ、ここまでね……」
震える手に握ったダガーを持ち替え、左手を添えて自分の喉元に切っ先を当てる。
「奴等に食い散らかされるのはごめんだわ……」
魔獣の気配が近づく中、ミーナは目を瞑り、両手に力を込めた。
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