第3話
ミーナは小型の荷役獣モフパカの手綱を引き、なるべく音を立てないように、耳を澄ませて注意深く周辺を見渡し、薄暗い森の中できらめく木漏れ日を辿るようにゆっくりと歩く。
しばらく森の中を探索し、日が真上に来る頃、木々が開け一際明るい場所に小さな泉を発見し、「やった」と小さくとび跳ねた。泉のほとりには野草が生い茂り、所々に薄く色づく小さな花が咲いている。
「うんうん、生えてる生えてる。ここにしようかしらね。もふみちゃん、ちょっとここで待ってなさい」
手近な木にモフパカの手綱をくくりつけ、白くふわふわした被毛に覆われた頭を撫で、少し離れたところで薬草やハーブを選別して袋に詰めていく。
「良いところね。薬草は上質だし、水はきれいだし、静かだし。これで魔物がでなかったら最高なんだけど」
そうして日が少し傾き始めるまで選別と採集を続け、薬草でパンパンになった袋を四つ、モフパカに背負わせながら話しかける。
――と、その時、
「ウォオオォォォォオオオォ!」
森の奥から地響きのような咆哮が響き上がり、木々の枝に羽を休めていた鳥達が飛び立ち、草葉が細かく振動し、泉の水面にさざ波が立つ。
「
怯えるモフパカを撫でて落ち着かせながら背負わせた荷物を全部下ろし、周囲を警戒する。
「発生地点からは遠そうだけど…… 森全体が殺気立ってるわね。急いで帰るわよ」
モフパカに背負わせた薬草の詰まった袋と不要な荷物を全て降ろしてその場に置き去りにし、手綱を引いて早足でヒュージモンスターが発生した方角を背にし、森の出口を目指す。
立ち並ぶ木々の密度が疎らになって森の終わりが近づく中、背後からはガサガサと茂みの中を多数の魔獣が潜り抜ける気配が迫り、鼻息混じりの小さな唸り声がミーナとモフパカを追い立てる。
「はぁ、はぁ…… 魔獣の気配、どんどん近づいてるわね。こっちに気づいてる。もうすぐ抜けられるってのに…… うん、逃げ切れないか」
足を止めて覚悟を決めるように、ふうと一息つき、手綱を離してモフパカの背中を強く叩く。
「もふみちゃん、ここは私一人で大丈夫だから、先に村に帰ってて。後で迎えにいくわ」
モフパカが小さく
「……さて、どこまでやれるかしらね」
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