第2話

「ねぇ、ここにはどんな用事で?」


 自分の荷物を片づけたミーナがカウンターの椅子に腰掛けるデュロイの隣に座る。


「領域の奪還だ」

「へー、今時珍しいわね。いつから?」

「三日ほど前からになるか。明日には帰還せねばならんが」

「ふーん…… 北の森で薬草の採集をしたいんだけど、強力な魔物はいるかしら?」

「北の森なら昨日討伐したばかりだ」

「ラッキー! 良いタイミングだわ。それじゃ、早いうちに行かないとね」

「それでも、この辺は比較的強力な魔物が多い。戦闘職でないと危険だ。わかっているだろう?」


 デュロイは小柄なミーナと調合師の装備を見て首を傾げる。


「そうねぇ、いつもはギルドに採集依頼を出して採ってきてもらってるんだけど、最近はあまり依頼を受けてくれる人がいなくてね。 ……ま、弱い者には弱い者なりの戦い方があるものだわ」


 ミーナはデュロイの顔を見上げ、笑顔で返す。


「そうか。無理をしないようにな。森で採集するなら明るいうちだ。夜は魔獣の領域になる」

「心配してくれてありがとう。気を付けるわ」


 ミーナはカウンターの椅子からぴょんと跳び下り、「それじゃ、またね」と手を振って宿を後にした。

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