旧知の仲

 城で朝日と王が話をしている頃、最前線上空では翼が生えた馬に跨ったナフトともう一人が話をしていた。


「おい……本当にこれでいいんだな……? ナフト……」


「あぁ、こんなところまで運んでもらって助かった」


「気にするな、私は………いや私たちはいつでもお前のパーティーメンバーだ……だがそれで質問をはぐらかせるとは思うなよ、もう一度聞くぞ? これで終わって良いと考えているんだな?」


「…………俺がやらなきゃ誰がやるって言うんだ? 俺は勇者なんだぜ?」


「…………だとしても一人で行くなんて選択肢は論外だ、朝日ちゃんと共に行くという選択だって出来たはずだ!」


「それこそ論外だ、さてそろそろ目的地か……相変わらず天馬は桁違いの機動力だな………」


「おい……待て………! ならせめて私だけでも…………!!」


「それも論外だ……お前がいなくなったら誰が朝日を見守るんだ?


 それだけ言い残してナフトは悪戯じみた笑いと共に天馬の背から飛び降りてしまった。


「あっ! くそっ………いくら頑丈とはいえ飛び降りるとは思わなかったな……甘く見積ってもそこらの山よりも高いはずなんだがな………」


 それにしても後のことは頼んだ………か。こんなことになるなら変にキャラを作るんじゃなかったな………。



 ―――――――――



 天馬から飛び降りた俺は雲を背で裂きながら地上に着いたときのことを考えていた。

 俺はきっとここで死ぬだろう。例え千の兵士を殺したところで、万の人間の命を奪ったところでこの国はもう止まらない。もしこれが俺じゃなく朝日だったら結果は違っていたのかもしれない。だが朝日が来てしまったらこんなに回りくどいことをした意味が無くなってしまう。彼女には絶対に人殺しをさせない。それが彼女が新しい勇者になったときに交わした、相手のいない約束なのだから。


 俺が長い時間を経て地上に着いたときにはすでに敵兵が俺を囲んでいた。

 出来る限り…………なんて甘えたことを言う余裕はない。俺が生きるために必要なら殺す。そう覚悟を決めてきた。

 まず俺を襲ったのは四方からの矢の嵐、当然全てを捌ききることは不可能に近い。だからなるべく動きに支障が出にくい箇所を犠牲にしてそれを耐えきる。続いて八方からの特攻、それは矢の嵐よりかは防ぎやすかった。雪崩のような人の多さのおかげで見た目よりも生ぬるい攻撃だったからだ。だがそれでも一振り、二突きと無視出来ないダメージを与えてくる。しかし止まることは許されない。何故なら守らなければいけないからだ。鹿

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