収穫
「やさぐれトマトさん!」
男は朗らかに台座の上にある物言わぬ死体に話しかける。死体はまだ新しく、腐敗は進行していないようだ。
「今日は何する?」
男は二十代前半くらいに見えるが、知性が欠落しているような印象を受ける。常に笑みを浮かべているが、彼の眼差しは狂人のそれだった。
彼の最近のトレンドは実際の人間を使った人形遊びだ。人形遊びといっても人間が主演なのでもはや演劇なのだが、その人間が既に死亡して動かないのだから人形遊びだというのが彼の主張だった。
元々この死体の人物と男でヒーローごっこをしていたが自分の理想とかけ離れた出来栄えに苛立ち、衝動に任せて
死体の人物は肥満体型だったが、胴体は
部屋には使用されたと思しき道具も散乱していた。その全てに黒い汚れがこびりついていた。
部屋は血塗れだったが気にする様子はなく、むしろ居心地良さそうな表情をしていた。
「何をしようか?やっぱり人形遊び?うーん……」
男は指を口に入れると唸りだした。どうやら考え込んでいるようだが、何も思い浮かばずイライラし始めたらしい。
すると突然ドアが開き、防護服に身を包んだ三人の人間が部屋に入ってきた。
「清掃の時間だ」
一人が男にドアを指差し、部屋を出るように指示を出す。男は渋々といった様子で
二人目の防護服をきた人物は男が部屋を出るように催促をし、三人目は死体に駆け寄った。
「また派手にやらかしやがって。片付けるコッチの身にもなれってんだ…」
「おい、まだ出て———」
防護服が死体を運び出そうと抱えた瞬間だった。男は
「ヤバイ……!」
男の近くにいた防護服の二人はすぐさま部屋の外へと駆け出し、部屋の中に一人取り残したままドアを閉めた。
「ちょ…待てって!」
死体を抱えていたため遅れた三人目はドアを叩くが全く開く気配がない。刻一刻と
何度も何度も、何度も何度も体当たりをするがドアが開く気配も壊れる気配もなかった。泣きじゃくり悲痛な叫び声を上げるも、何の変化と起きなかった。
何度も何度も何度も何度も何度も………
部屋の外に出た二人はその後もドアが何度も叩く音と叫び声を聞いていた。
だがそれが自分達の同僚の仕業だとは到底二人は思えなかった。相変わらず叫び声とドアを叩く音は鳴り響いているが、ドアの下から紅い液体が漏れ出ているのを確認した時から。
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