大阪到着

遅れることなく無事に新幹線に乗り込んだ私たち四人は荷物を網棚に乗せてそれぞれ席に着いた。指定席という事もあってか車内はガランとしていた。席の順は前から決めていて無難に男女で分かれた。航大の隣が良かったのは確かだけど言うに言えなかった。

「んーっ!これでひとまずゆっくり出来るね。」

灯が体を伸ばして言った。みんな早起きしてすぐに荷物を持って歩いてきたからやっぱり疲れているのだ。

「なー、これどうやって席回すんだ?出来ねぇんだけど。」

「えー?もう、しょうがないなー。」

克海と灯が席の回し方で悪戦苦闘している間、私はふと窓の外に目をやった。

向かいのホームでは今ちょうど普通電車が停車したらしくスーツ姿の人々が電車を出入りしている。

そのままボーッと外を眺めていると横からグルンと大きな音がして席が回ってきた。

「よっしゃ!成功成功!ありがとな灯!」

「もー、人遣い荒いんだから、帰りは克海がやってね。」

「おう、任せとけ。」

そんな二人の間を分けるように航大が来て私の前に座った。

「まあまあ、とりあえず座ろうぜ。」

彼がそう促すと二人とも席に着いた。


私たちはこれから大阪まで三時間ほど新幹線に乗り、まずはホテルにチェックインして荷物を置く。それから道頓堀に向かい昼ご飯を取ってからお土産探し。五時くらいから大阪駅で色々と見て回った後に花火を見る。この前に四人で通話した時にそう決まった。


「じゃあお昼ご飯なに食べるか決めよっか。」

そう言って灯は中央にあるテーブルの上にスマホを差し出した。

「たこ焼きとかお好み焼き以外にも色々あるっぽいよー、串カツとかさ。」

「串カツいいじゃん!俺串カツに一票!」

「いや、折角大阪に来たのに串カツって、航大マジか?ここはたこ焼き一択だろ!大阪と言えばたこ焼きだろ!?」

「えー、私はお好み焼き食べたいなー、海結はどう?」

まさかここまで三人の意見が割れるとは思わなかった。それと決定権が私に委ねられることも。三人とも一言も話す気配は無く私が決めなければ話が進まないような状況だ。

中央の小さなテーブルの上に乗ってある灯のスマホに目を移すとさっき三人が言ってた大阪を代表する食べ物の画像がズラリと並んでいた。どれも美味しそうでとてもひとつに絞れそうにはない。

「もう全部食べよう!一日くらいならいっぱい食べても大丈夫でしょ!」

こうするしか無かった。折角大阪に行くんだから満喫しなきゃ損だ。


三人は愕然としてたけど笑いだしてやがて大爆笑となった。

「海結思い切ったねー!私はそれでいいけど二人は?」

「俺は全然良いぜ!けれど航大が食いだおれないか心配なんだよなー。」

「いや食いだおれねーよ、何なら勝負でもするか?」

「やろーぜ、受けて立つところだ!」

二人が熱く燃えてる横で灯が

「あらー、完全に火がついちゃったね。二人とも変な所で張り合うんだから。」

「そうだね。でも、すっごい楽しそう。」

「あら、これは海結も参戦か?」

「そんな訳ないじゃん!まず私じゃあの二人には敵わないよ。」

男子二人は早速どの店に行くか相談している。

「あの二人に任せとけばお店は決まりそうかな、海結、私たちはデザートのお店とか調べよ!なんか有名なパフェ屋さんがあるらしいんだけどさ…」



そんな話もお店が決まるとすぐに落ち着き、私たちはしばらくの間灯が持ってきてくれたトランプで大富豪に興じていた。

盛り上がってるうちに新幹線はすぐに大阪府に突入し、ついにさっきアナウンスで

「次は〜大阪、大阪」

と流れた。

「やっと大阪だって!めっちゃ楽しみ!」

「外見ろよ!なんだあのビルくそ高ぇぞ!」

窓の外は克海の言う通りビルが建ち並ぶ大都会だった。

「やっと着いたー、俺もう乗りっぱなしで疲れたわ。」

航大が顔を上にあげてそう言った。

「ふふっ、確かにね、でもこれから歩きらしいよ、ね?灯?」

「そうですねー、海結ちゃんの言う通りでございます。」

灯は窓を覗いていた顔を戻して、

「航大君には非常に残念なお知らせになるのですが、これから私たちは駅を出た後、まずこのホテルまで歩いて向かいます、そこでこのとても邪魔な荷物を置いてからまた駅に戻ります。そこから地下鉄に乗ってこちら、なんば駅まで向かいます。なお、ホテルで一休みなんてさせませんのでご了承ください。」

「はー?まじかよー!ハードスケジュールだな!」

「まさか、航大もうバテたのか!?なんだよ大食い対決は俺の不戦勝で終わっちまうのかよー、楽しみにしてたのにー。」

「いや、全然行けるわ、ほらもう着くぜ、そろそろ準備しないと。」

航大が我先にと荷物を網棚から降ろし、新幹線の停車を待った。

私たちも続々と準備してやがて新幹線が停車してドアが開いた。

大阪駅は私たちが乗ってきた駅の数倍は人がいて電車も行ったと思えばすぐに次の電車が来る。

「着いたぞー!大阪ー!」

克海が両腕を上げて叫んだ。

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