お茶会作戦会議

一日は早くも過ぎて、今キンコンカンコンと六時間目の終了を告げるチャイムが教室に鳴った。

下駄箱を出て正門に向かいともう二人は先にそこに居た。。

「ごめん!待った?」


「いや全然待ってない。んじゃ行こー!」


学校から歩いて15分。駅近くにある最近話題の洒落たカフェは学校帰りの女子高生達で大盛況だった。

けれど、幸いにも待っている人は居なかったので店員さんに三人という事を伝えたらそのまま席まで案内してもらえた。

テラス際の三人席に座ると早速克海がメニューを開いて、

「やっぱ、甘そうなもんばっかだなー、んーチーズケーキとコーヒーでいいか。」

「ん?克海って甘いもの無理だっけ?」

そう言ったのは灯だった。

「いや好きなんだけど、今はなんかそんな気分じゃねーなって。」

「えー、せっかく来てんだから甘いの食べなよーどうせ一緒にカフェに来れるような相手だって居ないでしょ?」

「うるせーよ!俺は陸上が恋人だ!」

目の前でワイワイとやりあっている二人を見て私は

「もう二人くっ付いちゃえばいいじゃん。」

とボソッと小さく呟いた。

二人には聞こえないように言ったつもりだったけれどどうやら聞こえていたようで、

「それは海結だろ!」

「それは海結でしょ!」

と二人は声を揃えて言った。



「結局んとこさ、海結はどっちなわけ?航大の事。」

私と灯より先に来たチーズケーキを口に運びながら克海がそう聞いてきた。

ちなみに私はガトーショコラ、灯はモンブランをそれぞれ頼んだ。

どっちとかも無く好き一択なんだけれど、それを堂々と言うのはやっぱりどこか恥ずかしい。けれど、この二人にすら言えなきゃ告白だなんて夢のまた夢だ。

「航大の事は好き…です。」

無意識の内に下げていた顔を上げたら、二人がニヤニヤしていた。

「ほぉ、なるほど、好きなわけですか。じゃあこれは夏が待ち遠しいですな。」

克海が変な喋り方でそう言って、

「そーですな、これはもう夏休み中に告白するしか無いですな。」

灯が悪ノリし始めた。

「夏休みって…そんな急に…」

私がそう言うと灯が、

「いや急も何も恋愛なんて勢いだよ?それにここで行かなきゃクリスマスもバレンタインも何にも無くなっちゃうよ?」

そう言われて私は少し納得してしまった節もあって黙ってしまった。

「お?これは納得したか〜?んじゃ、夏休みは海結の告白大作戦決行だな!」

克海が畳み掛けるようにそう言い、灯が

「オーッ!って海結ノリ悪いなぁ、主役は君たち二人だよー?」

と言うから私は小さく手を掲げておーっと小さく言った。


「そうと決まればまずは何処に行くかだな、海結は行きたい場所とか無いのか?」

克海にそう聞かれて、私は航大が花火を見たいと言ってたのを思い出した。

「うーん、私じゃないんだけど航大が花火を見たいって言ってたから花火見に行きたいなぁ」

「花火かぁ、ちょっと待ってね…あっ、出てきた、多分一番行きやすいのは大阪かなー」

灯がスマホで手早く調べてくれた。大阪といえば近畿を代表する大都会だ。私たちの所から行くとなると新幹線で行かないといけない。

「大阪かー、良いんじゃね?新幹線で行けばすぐだろ。どうせ四人全員金は余ってんだろ。」

私は大阪に行く分くらいのお金はあった。趣味とかにお金をかけたりしないし、加えて地元でお金を使うようなところも無いから溜まっていく一方だった。多分、航大も灯もバイトしてるから問題ないだろう。

「あっ、ちょっと待って、もしかしたら帰りの電車無いかも」

そう言って灯がスマホの画面をこっちに向けてきた。

「ほらやっぱり、花火が終わるのが十時でさ、そっから新幹線には乗れるんだけど乗り継ぎの電車が無くなっちゃう。どうする?早めに引き上げて帰る?」

うーん…と私と克海で合わせて唸った。

先に口を開いたのは克海で

「それならさ、もういっその事大阪で一泊すれば良くね?そうすれば次の日も遊べるし、何よりバタバタしなくていいし。」

「あー、確かにそれ良いかもね、ホテルとかも今からなら全然取れるだろうしねー。海結もそれで大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。」

ガトーショコラを一口、口に運ぶ。チョコの甘さが広がってとってもおいしい。

「じゃあ後は航大次第かなー、今ラインしたら反応するかな。」

そう言って灯は文章を打ち始めた。こういう時の灯の行動は早い。

「よし、おっけ!じゃあ返信来るまで待ちますか!」


いただきまーす、と小さく呟いてから灯はモンブランを食べながら、

「そういやさ、海結はいつから航大の事が好きだったの?」

突然流れ弾が飛んできたから私は思わずむせ返った。それでも灯は続けて、

「確か冬ぐらいは好きな人居ないって言ってたよねー、だとしたら今年の春くらいから?」

「うん、そうだよ。」

「へぇー、なんか少女漫画みたいだね、幼なじみの魅力におっきくなってから気づくって。」

その少女漫画みたいに上手くいけば良いのにと思う。


「あっ!返信きた!」

私と克海は灯の方に自然と体が動いた。

「航大、おっけーだそうです!大阪一泊二日、決定しました!」

「やったー!」

柄にも無く大きな声が出てしまった。

克海は笑いながら、おー、と小さく拍手をしてた。

灯は

「夏休み、楽しみになってきたね。」

と小さく笑った。

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