エピローグ

「ねえ……あのね」



 相手は振り向いた。


 不思議そうに私を見つめる。


「誰にも……言わないでほしいんだけど」


 私は、笑った。


 彼に焦点は合わせなかった。


「誰にも、言ったことないから」


 彼は了承した。


 私は、少し俯いた。


 足元から伸びる影を眺めた。


 長い沈黙が流れる。


 それでも彼は、待ってくれた。


「あのね、私ね——」


 顔を上げ、彼と目を合わせた。



「——人が『泣く』意味が、わかんないんだ」



 私は


 いつもと変わらず


 目の前に立つ“人間”に



 満面の笑みを見せつけた。

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