Take 4
すでに昼過ぎ。
国王が別室にて待機している。
今回は、勇者召喚がされた後、大きな召喚の間の扉を勢いよく開け放ち、かっこよく入るらしい。
「よし、ウルト! 初めて良いぞ! 」
「了解しました! 」
早速、ウルトが詠唱を始める。
「『我、神に祈らん。我らが祖国を魔の手から守るための力を、我の手に。異界の勇者を時空を越えて、我らの救世主をここに喚ばん。我らが信ずる神の名の下に』――勇者召喚」
召喚の間が光に満たされる。
「うおっ!? なんじゃこれはっ!? 」
国王が慌てている様子だが、ウルト達も慌ててはいけないので聞かなかったことにする。
光が徐々に収まり、魔法陣の上には一人の人影。豪華そうな服を着ている。
光が消え、よく見てみると……
「「「「こ、国王陛下っ!? 」」」」
今度は国王を召喚してしまったようだ。
つい先程まで扉の前で待機していたはずだが、またやってしまったらしい。
国王が先程慌てていたのはそのためだ。扉の前で待機していると、地面が急に輝き出し、目を瞑り再び目を開けると召喚の間にいたのだ。
「いやぁ、あーやって召喚されるんじゃな。いい体験じゃった」
「国王陛下、とりあえず送還させますね」
「えっ、ちょっ――」
国王がいきなり送還される。
しばらくして、扉が勢いよく開け放たれ、国王が入ってくる。
「ウルト! なぜ儂を送還させたんじゃ! 」
「すみません。あの魔法陣には色々と細工がされてまして……」
「なんじゃそういうことなら良いが……ちゃんと説明してからでも良いじゃろう」
「すみません、つい……」
「つい!? ついで儂を強制送還するとは……」
ついで送還されたことに国王は少し引いている。
「しかし、直ぐに次に取り掛かるか? 」
国王が召喚され直ぐに送還されたためにいつものゴタゴタがなく、まだ夕方にはなっていない。
「あ、いえ、明日にしましょう。少々、勇者召喚の魔法陣を修正したいので……」
「ああ、分かった。次は明日にしよう。お主ら! 今日はもう解散じゃ! 」
「ありがとうございます。イリスさん、魔法陣の修正手伝ってくれますか? 」
「ん? いいですよ。あっ! 召喚された時に大爆発する魔法でもつけますか? 」
「お前バカか! 一般人が召喚されたら即死じゃねーか! 」
「はぁい。真面目にやりますよ真面目に。さっさと終わらせますよ」
「? お前誰だ? あのイリスが真面目になるわけねぇし」
「なんですか! 真面目にしてたらダメなんですか! 私だってねぇ、他にやることがあるんですよ! 書類作業とか書類作業とか! 早く終わらせたいんですよ! 」
「それはお前の自業自得では? まあ、頑張れ」
「む、なんかイラッとしますが、まあいいでしょう。ウルト、早く取り掛かりますよ」
真面目になったイリスに驚くも、そういうことかと納得する。イリスが何の理由もなしに真面目になったら災害が起こるかもしれない。
閑話休題。
「はぁ、締まらんなぁ。まあ良い。さてと儂も練習しておくかの」
その日、国王はかっこよさを求め練習し続けたそうだ。
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