4.

 面接には、僕を含め5人ほどしかいなかった。


 確か二次面接だったと思ったが、ここまで少なくなるのは意外だった。一次面接にはかなり人がいて、驚いたと同時に安心した記憶がある。まだ内定を欲しい奴らはこんなにいるんだ、と少しだけ心強くなったものだが、よく考えてみれば彼らもほかから内定をもらっている可能性はあるわけで、「ここはもういいや」と面接を蹴ったってこともある。


 この中に、僕みたいに内定がないやつはどれだけいるのだろう。


 焦っているのは僕だけに思え、惨めになってくる。他人と比較しても仕方ないことだが、これは他人と比較され、優劣を付けられるものだ。いやでも気にしてしまう。


 待合室をして通されたのは、どこかの会議室のような場所だった。しかし、白の小ざっぱりとした会議室、ではなく、テレビかなんかで重役会議があるときに見る、威圧感を感じるところだった。


 革張りの椅子に、中心にはゼロの形をしたテーブル。ピカピカに磨き上げられたそれに、5人分のお茶が用意されていた。特に座る場所も指示されてないので各々勝手に座る。


 今日いたのは全員男性だった。真面目そうな奴らばっかだった。賢そうな奴ばかりだった。余裕そうな表情をしているように見えた。


 僕が一番、劣等生に見えた。


 全員が言われるでもなく自然に等間隔に座り、面接に備えて準備をしていると、待合室の戸がノックされた。男性が入ってきた。スーツ姿の、おそらく採用担当だろう。


 簡単な挨拶のあと、今日の予定が伝えられた。面接は上の階で行われること、そして一人ずつ行われること、待ち時間には交通費の精算や、質問があれば各自訊くこと。途中、「面接の順番は?」との質問が飛び、順番が発表された。僕は二番目だった。


 面接のあとは順次解散。合否は後日メールで郵送されるという。


 特に変なところもなく、幾度となく経験していることだったので、ほかに質問はでなかった。それを見た採用担当は上の階に準備ができたことを伝え、それから一番目の人が呼ばれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る