第10話 近況報告20200207 小林佳徳さんのこと

変わらない男のすこしアップデートされたスタイル。


小林佳徳氏はわたしの大学院時代の後輩で、弟と同年代です。名前はよしのりと読みます。ベネッセやライブドアなどに所属し、現在は転職11回目の強者です。技術者から人事に転向し、様々な人間と向き合っている方です。ライブドア事件について本を書いたこともあります。


三軒茶屋で飲むことになりましたが、システムの手違いで予約が成立しておらず、やむを得ず飛び込みでお好み焼き屋に入りました。カウンターで気負うことなく話せたのでまぁ良かったかなと思います。


いつも明るくちょっと軽めで、メンタル的にはうつとは無縁な感じがします。彼は大学時代ずっとコンピューターアニメーションに取り組んでおり、草分けのような存在です。X68000オタクでもあります。サバサバ飄々とした雰囲気がうらやましいかぎりです。自分はどうしても深刻になってしまいがちなので。


彼の中のわたしの記憶をたどると、当時の研究室の高価なワークステーションについて、わたしがかれに「ぶっこわしてもいいよ。きちんと直すから」と言ったことが印象深かったようです。「普通は壊すなというところをそう言われた、へえ」というのが彼の中のわたしの像だったと記憶しています。


おそらく20年ぶりくらいの再会だと思います。二人で長距離を自転車に乗ったり、格ゲーで対戦したりしました。開幕直後に真空波動拳を撃つクセがあり、その確率が六割くらいなので、彼に撃たせてから勝負するという手を使っていました。そうしなきゃもっとスーパーコンボをうまく使えるだろうにと思っていましたが、頑としてスタイルを変えません。まあ、リュウはそれでも成立します。勝ち負けよりも自分を持っているヤツは好きです。


思い出話や消息などに花が咲き、家族の話や仕事についてになりました。なんで11回も転職することになったのかは聞きませんでしたが、彼の中では欧米のスタイルが当たり前だと感じているようで、やりたいことをやって稼ぐためというシンプルな原理があるようなのです。いずれカウンタックを買うという目標を掲げています。人事の人間がそう言うのだから、それはある意味正しさの一部である気はします。彼も何かを積み上げている途中なのでしょう。


みんないつの間にか父親になっており、わたしは船に乗り遅れたように波止場で見送っています。娘さんとの関係はサバサバしていて、押し付けをしたくないとのことであり、グレる心配はないでしょう。自分の姪っ子のことを聞かされた気がしました。


あっという間の3時間でしたが、3時間あっといい続けたわけではありません。最後に握手して、ハグをしあって別れました。お互い違う道へ。


ハグなんて友情表現ははじめてかもしれません。わたしは自分を理屈っぽいイヤなやつだと思うのですが、彼はそんな私の話を余すことなく聞いてくれて、笑顔で的確にコメントをくれました。先天的生得的にイイヤツなんだろうなとつくづく思います。少なくとも私にとっては。


死ぬまでにあと何回飲めるかはわかりませんが、そのときもかわらずに元気をもらえる気はします。


わたしはかれに何をあげられるのか、ちょっとよくわかりません。


追伸

彼からこれについて小説を書いてみたら? と言われたことがあるのですが、アルコールのせいで揮発しました。すみません。なんの話だったっけ?

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